昨日の日経朝刊トップの記事はこれ。

公的年金の受給繰下げを70歳以降もできるようにする案は以前から色々なところで出ていましたが、政府が取りまとめている新たな高齢社会対策大綱の案にも盛り込まれる見通しとなり、近い将来法案化される可能性が高くなってきました。

現在、公的年金の受給開始は65歳からが基本ですが、60歳~70歳の範囲で各個人が選べるようになっており、開始を遅らせた場合はその分年金額が増える仕組みになっています。増額率は1年あたり8.4%で、70歳まで遅らせると42%の増加となります。

繰下げを何歳まで可能とするのか、70歳以降の増額率を何%するのかはこれから検討されることになりますが、基本的な考え方としては年金財政に中立な設定となるはずです。

すなわち、70歳以降の繰り下げを選択する人が増えた場合、個々人で見たときには繰下げによる経済的な有利・不利は当然出てくることになりますが、年金制度全体で見た場合にはプラスにもマイナスにもならないように設定するということです。

この場合、増額率の設定は、ほぼ次の2つの要素により決まると考えられます。
  1. 死亡率
  2. 予定利回り
1点目は年齢ごとの死亡率です。これによって、受給を繰り下げたときに年金の受給期間が平均して何年短くなるかが計算できます。受給期間が短くなればなるほど、それに反比例して1年あたりの年金額は増えることになります。

2点目は年金資産の予定利回り、すなわち「何%で運用できるか」という運用利回りの想定です。受給を繰り下げると、その間受給するはずだった年金額を運用に回すことができますから、運用益の分だけ年金額を増やすことができます。当然、予定利回りが高いほど増額率は高く設定されます。

厚生労働省が公表している直近の死亡率(第22回国民生命表)と、公的年金の実質運用利回りの目標である1.7%をもとに試算してみたところ、65歳から70歳までの繰下げによる増額率は、男性で40.6%、女性で32.1%と、現行の実際の率(性別にかかわらず42%)よりも低くなりました。

これは、現行の増額率が設定された当時と比べて、死亡率、予定利回りともに低下していることが要因ではないかと考えられます。したがって、70歳以降の増額率の設定とともに、70歳までの増額率の見直し(引き下げ)についても検討される可能性はあるかもしれません。

上記の前提で70歳から75歳までの繰下げによる増額率を試算すると、男性で73.2%、女性で52.5%となりました。単純に間を取るとおよそ63%(1年あたり12.6%)の増額率となります。65歳からの5年間に比べ、平均年金受給期間の減り方(減少割合)が大きくなるため、増額率も高く計算されます。

70歳までの増額率が42%のままだとすると、75歳までの10年間の合計で増額率は100%を超え、年金額は65歳から受け取り始めるのに比べて2倍以上になります。

長く働くなり、資金を貯めておくなり、投資するなりして、年金に頼らずに75歳を迎えられた人にとっては、非常に強力な長生きリスクへの対応手段となるでしょう。

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