先週1月11日、厚生労働省より確定拠出年金制度の法令解釈通知が発出されました。昨年11月20日のパブリックコメントで公表された案から実質的な内容の変更はありません(結果の公示はこちら)。

今回の通知改正は、2018年5月に施行される確定拠出年金法の改正事項に対応したものであり、中小企業向けの制度普及策、運用の改善、ポータビリティの拡充の3つがテーマになっています。

このうち運用商品の選定と提示方法については、以下のとおり、昨年(2017年)6月に取りまとめられた運用専門委員会の報告書(こちらに掲載)に沿った内容が規定されています。

運用の方法の選定及び提示については、法第23 条第1項において上限が定められているが、今後の運用の方法の追加等も念頭に、上限まで選定する(追加する)のではなく、加入者等が真に必要なものに限って運用の方法が選定されるよう、確定拠出年金運営管理機関(運営管理業務を営む事業主を含む。以下この第4から第6までの事項において「確定拠出年金運営管理機関等」という。)と労使が十分に協議・検討を行って運用の方法を選定し、また定期的に見直していくこと。

その際、以下の点に留意すること。

ア 運用の方法の全体のラインナップが加入者等の高齢期の所得確保の視点から見て、バランスのとれたものであること。

イ 加入者等の効果的な運用に資するよう、個々の運用の方法の質(手数料含む。)を十分吟味し、その選定理由を説明すること。

定期的な見直しを行った場合は、加入者等に対し、見直しの結果及びその理由を示すこと。

運用の方法の提示に当たっては、運用の方法を選定及び提示する確定拠出年金運営管理機関等が、個々の運用の方法の選定理由に加えて運用の方法の全体構成に関する説明を行うとともに、個別の運用の方法の推奨が禁止されていることに留意しつつ、例えば次のような提示の工夫をすること。

① 元本確保型の運用の方法と投資信託等に分けて表示し、元本確保型についてはその種類(預金、生命保険、損害保険等)、投資信託等については投資信託の種類(伝統的4資産(国内株式・国内債券・外国株式・外国債券)等)、パッシブ・アクティブ等の区分を示すこと。

② 一般的な指数によるパッシブ運用の投資信託を一括りにして「基本的な運用の方法」等、アクティブ運用やオルタナティブ運用を一括りにして「応用的な運用の方法」等と示すこと。なお、運用の方法を括るに当たっては客観的事由に基づき一括りにし、その事由についても説明すること。

③ 運用の方法の一覧表の中において、手数料(投資信託の販売手数料率、信託報酬率、信託財産留保(額)率、保険商品の解約控除等)を示すこと。

前段は、商品ラインナップの選定についての規定であり、加入者が適切に商品を選択できるように商品を厳選することを求めています。しかし、現に商品数が多くなりすぎているプランや、ラインナップにふさわしくない商品が入ってしまっているプランにおいて、これらを除外することには困難を伴います。既存の商品の除外については商品選択者全員の同意が必要とされているためです。

また、不特定多数の企業が共通のプランに加入する総合型DCにおいては、個別企業の意向をそのまま商品ラインナップに反映させることはできないため、商品ラインナップを見直すには、別の総合型DCに乗り換えるほかないというのが現実でしょう(総合型DCに加入する企業のほとんどは小規模であり、引受の制約等から単独での実施が難しい)。

これらの課題については、商品の除外手続きがスムーズに進むような運用上の工夫(根本的には法改正が必要ですが)や、小規模企業が加入する規約を選べるように総合型DCに関する商品ラインナップ等の情報開示を進めることが必要ではないかと考えます。

一方、後段は加入者に対する商品ラインナップの提示の仕方に関する規定です。商品を絞り込むことが現実的に難しいとなれば、提示の工夫でなんとかするしかありません。しかし、運営管理機関や事業主が個々の商品について選択することを推奨したり、あるいは選択しないことを推奨することは、法令で禁止されています。

加入者の同意が得られれば商品の除外も認められているわけですから、商品の提示方法についてももう一歩踏み込んで、本来除外すべきと考えられる商品についてはそのように提示することも認めてよいのではないかと思うのですが…。