ここのところよく目(耳)にする「働き方改革」。そのテーマは多岐にわたりますが、今回はその中で「副業解禁」について取り上げてみたいと思います(最近は「複業」という表現もよく見かけるようになりましたね)。

副業は、働き方改革の中では、一人ひとりの能力や置かれた状況に応じて、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることにより、生産性を高めるための方法の1つと位置付けられています。

しかし、社員に副業を認める(あるいは奨励する)ことについて、企業側には相反する2つの見方があるようです。

「人材の流出を招く」とする見方
  • 副業で成果が上がることにより主・副が逆転し、本業になってしまう
  • 副業をきっかけに他社から誘いを受けたり、他社でも通用するスキルを身につけることにより転職してしまう
  • 優秀な人材ほど副業を容認することで離職のリスクが大きくなる

「人材の定着率を高める」とする見方
  • 副業を希望する社員の満足度が向上し、定着率が高まる
  • 転職(独立)せずとも社内ではできない仕事にチャレンジすることができる
  • 優秀な社員ほど自社に縛り付けようとすることで離職のリスクが大きくなる

で、どっちが正しいかというと、各企業が明確な意図をもって適切に運用する限りにおいてはどちらも正しいのではないかというのが私の考えです。

例えば、以前こちらの記事に書いた「早期排出型」を目指す企業であれば、一定年齢以上の社員に対して副業を奨励することで、会社から"卒業"するための準備を促すことができると思います。実際に卒業していった社員と現役社員との交流の場を設けたりすることで、現役社員はより明確にセカンドキャリアをイメージできるようになるでしょう。

一方、優秀な人材の定着を図りたい企業においては、副業で得たノウハウや人脈を本業に活かせる機会を用意したり、そうした成功事例を社内で共有することによって、自社での働き甲斐を高めることができると考えられます。

いずれにしても、副業を経験することは、視野を広げたり新たな仕事を経験できるという点では社員本人にとってもプラスになります。「退職給付」を社員のセカンドライフを充実させるためのあらゆる"ベネフィット"ととらえるなら、副業の容認や奨励もそのメニューの1つに加えることができると考えます。