高年齢者の雇用に積極的な「積極雇用型」の企業では、従来型の退職金にかけていたコストを、就業不能保険や社員の再教育、高年齢者も働きやすい職場環境の整備にシフトさせていくことがふさわしいということを、先日の記事では書きました。

では逆に、若い年齢での転職・独立を促し、高年齢者の雇用を極力抑える「早期排出型」の企業にふさわしい退職金制度とはどういうものでしょうか?

まず考えられるのが、早期退職者に対する退職金の加算です。例えば、45歳、50歳といった節目の年齢で退職金を加算したり、一定年齢以降は金額が逓減していくような仕組みがあります。

しかし、たとえ退職金を1000万円上乗せされたとしても、次の仕事に対する期待や自信がなければ積極的に早期退職に応募しようとはならないでしょう。したがって、お金以外の面での転職や独立に対する支援がより重要になります。

積極雇用型企業での再教育が自社での雇用のためであるのに対して、早期排出型企業での再教育は他社への就職(または独立)が目的となりますから、より汎用的な能力開発や、意識・マナーに関する教育が重視されることとなるでしょう。

したがって、そうしたことに初めて取り組む企業が自社内で再教育を完結させるのは難しく、再就職先企業とのマッチングも含めて、外部委託が必要になるかもしれません。

また、会社を離れる社員の将来的な不安を少しでも和らげるためには、リタイア後の生活資金としての退職金も確保しておきたいところです。これには、60歳まで資金を引き出すことができず、その代わりにポータビリティが確保されている確定拠出年金が適していると考えられます。

すなわち、退職金制度は、転身支援の位置づけで退職時に会社から支給される一時金と、転職(独立)後も60歳まで積み立て可能な老後資金としての位置づけである確定拠出年金とで構成され、高年齢者への人件費を抑える代わりに再就職支援の取り組みにコストを配分するという形になります。

しかし、そうした文化のないところにいきなり「早期排出型」の仕組みを入れようとしても、社員の不安や疑念を招いてしまう可能性があります。まずは60歳定年時に再雇用以外の具体的な選択肢を用意しておき、50歳代後半を再就職のための準備期間と位置付けて支援する仕組みを整えるところから始めるのが現実的かもしれません。

そこである程度”成功体験”を積み、下の世代に示すことができるようになれば、より若い年齢での会社からの”卒業”を促す仕組みも機能するようになるのではないでしょうか。