昨年の年末、大和総研から「外国税額控除の改正で投信のリターンが改善する」と題するレポートがリリースされました(こちらに掲載)。2018年度の税制改正大綱に、外国株式に投資する投資信託の配当に対する二重課税の解消が盛り込まれ、税引き後のリターンが改善する可能性があるという内容です(2020年1月以降に支払われる配当から)。

レポートで紹介された試算例で見ると、米国株に投資する投資信託の場合、約2%の配当利回りに対して米国での源泉徴収(10%)があり、それを差し引いた後の配当に対してさらに日本で源泉徴収(所得税15%+住民税5%=20%)されるため、税引き後のリターンは2%×0.9×0.8=1.44%となります。税引き前に対して0.56%のマイナスです。

これに対し、税制改正後は日本の所得税から米国での源泉徴収分が控除され、税引き後のリターンが0.2%改善することが想定されます。

ただ、NISA(一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA)や確定拠出年金ではもともと配当に対する日本国内での課税は免除されていますので、今回の税制改正によるリターン改善は見込めません。言い方を変えると、NISAや確定拠出年金であっても国外での源泉徴収による負担は逃れられないということです。

また、この国外での税負担は、外国株式のインデックス運用におけるベンチマークからの乖離要因となります。外国株式のインデックス投信の運用報告書には、ベンチマークからのマイナス要因として以下のような記載があります(配当金に対する税負担は投資信託の基準価格に反映されている)。
配当金に対する課税(ファンドでは税引き後の配当金が計上される一方、ベンチマークは税引き前で計算されるため)
実際にどれほどのマイナスとなっているのか、外国株式のインデックスファンドの中で最も運用資産残高の大きい(※)「野村外国株式インデックスF(確定拠出年金)」でベンチマークと実際のリターンを比較してみると、以下のようになります。
※モーニングスターのサイトでの検索結果による。
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平均すると年率で0.6%くらいのマイナスですね。

運用報告書を見ると、このうち0.2~0.3%が信託報酬などのコスト負担によるものとなっているので、配当金に対する税負担が0.2%分あるとすると、マイナスのうち0.4~0.5%はこれらで説明がつきます。

その他為替レートの時間差による一時的な要因もありますが、コスト負担と税負担で説明のつかない差異が大きく出ていたり、継続して出ている場合には、運用そのものがベンチマークに連動していない可能性が高いと言えるでしょう。

インデックス運用の投資信託については、ベンチマークとしている指数との乖離が小さいかどうかが運用実績評価のポイントとなりますが、それが運用そのものによるものなのか、それ以外の手数料や税金の負担などによるものなのかの見極めが重要となります。