先日の記事では高年齢者の雇用に対するスタンスを「積極雇用型」「限定活用型」「早期排出型」の3つのタイプに整理しました。今回はこのうち「積極雇用型」の企業における退職金制度のあり方について考えてみたいと思います。

人口減少が進む中で高年齢者を重要な戦力ととらえ、年齢にかかわらず長く働いてもらうという考え方を突き詰めれば、退職金は必要ないともいえます。高年齢者にとって退職金はリタイアへのインセンティブとなり、会社にとってはリテンションというよりリリースとしての機能を持つからです。

老後の生活資金という観点からも、一定の賃金水準を維持したまま働き続きけることができればその間は年金収入に頼らずに生活できますし、70歳まで現役で勤務すれば公的年金だけでもそれなりの金額を確保できます。

勤務期間を通算した平均年収が500万円だとして、勤務期間が25~60歳の35年だとすると、65歳からの年金月額は概算で14.4万円程度となります。これに対して、勤務期間を70歳までの45年とし、さらに70歳までは給与収入があるので受給を繰り下げると、年金月額はおよそ23.6万円となります。配偶者の年金も合わせれば、夫婦二人で普通に生活する分には困らない水準です。

ただ、高年齢になると体力や能力の個人差が大きくなり、みんながみんな70歳までフルに働けるとは限らいないですから、例えば65歳以上は仕事も収入もある程度ペースダウンすることを想定し、月に10万円、5年間で総額600万円程度の退職金があると、ある程度余裕をもって安心して働けるかもしれません。

これを確定給付型の企業年金として受給すれば、給与と合わせて定期的な収入が得られ、公的年金の受給を繰り下げておくことによって公的年金等控除をフルに受けられるので、税金もほとんどかかりません。

あとは社員が病気やケガで働けなくなったときのために就業不能保障の団体保険に入っておけば、さらに安心して働いてもらうことができるでしょう。

従来の退職金に掛けていたコストを65~70歳の収入減を補うための企業年金に絞り、余った部分を就業不能保険や社員の再教育、高年齢者でも働きやすい職場環境の整備に充てることで、「積極雇用型」の企業にふさわしい退職金制度をつくることができるのではないかと考えます。