昨日の日経電子版にこんな記事がありました。

「一般的にアクティブ型は市場平均になかなか勝てないともいわれるが、今年は違い、8割近い投信が日経平均の上昇率を上回った。」
「ファンドマネジャーの腕次第で差がついた年だったといえる。」

とありますが、市場平均というのはアクティブ運用、パッシブ運用すべてを含めた平均ですから、理論的には(手数料を考慮しなければ)平均に勝てるアクティブ運用は金額ベースで半分になるはずです。

でも上の記事によると、2017年(正確に2017年11月まで)のアクティブ運用の勝率は8割近くになっています。これをどう考えたらいいのでしょうか?

本当の理由その1:日経平均には配当が含まれない

株式への投資で得られる利益には、株価の値上がり益と配当による利益の2つがあり、投資信託の基準価格(分配金再投資後)にはその両方が反映されます。

一方で、日経平均株価は文字通り株価の平均なので、その上昇率には配当分は含まれません。したがって、普通に日経平均の採用銘柄に投資していれば、配当分だけ日経平均を上回ることができます。

直近では、配当利回り(株価に対する年間配当の割合)の平均は1.5%程度ありますから、日経平均に連動する信託報酬の低い投資信託を購入すれば、ほぼ確実に日経平均を上回ることができるでしょう。

実際、信託報酬が0.25%未満の日経平均に連動する投資信託5本について、今年の11月末までの1年間の騰落率を見ると、いずれも25.90%~26.16%の範囲にあり、この間の日経平均株価の上昇率24.12%を2%前後も上回っています。

本当の理由その2:日経平均は市場平均ではない

日経平均株価は「日経225」などと表記されるように、東証1部に上場している株式のうちの225銘柄について平均を取った指数です。したがって、日経平均は市場全体の平均を表したものではなく、市場全体から見れば日経平均の対象銘柄に絞って投資することはアクティブ運用だということもできます。

2017年1月~11月の日経平均の上昇率は18.9%となっていますが、市場全体の平均を示す各指数はどうなっているのか、調べてみました。

TOPIX(東証1部全体):18.0%
東証2部指数(東証2部全体):30.0%
ジャスダックインデックス(ジャスダック全体):40.4%
マザーズ指数(マザーズ全体):23.8%

TOPIXについては日経平均を若干下回っていますが、他は日経平均を大きく上回っています。つまり、投資対象とする株式を東証1部に限定せず、他の市場において平均的な運用を行っていれば、自然と日経平均を上回る投資環境にあったということです。

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アクティブ投信の運用実績が日経平均やTOPIXを上回っているからと言って、その理由がファンドマネージャーのスキルにあるとは限りません。アクティブ投信を正しく評価するには、その運用目標がどこに置かれているのか、目標設定は妥当なのかを見極めなければなりません。

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