前回の記事では退職金制度が持つ3つの機能のうち、Recruit(人材の獲得)について考えてみました。今回はRetention(人材の定着)について取り上げたいと思います。

多くの会社では、退職金の支給要件として一定の勤続年数を設定しています。例えば、勤続3年以上でないと退職金は支給しません、といった具合です。

これには、入社したからには少なくとも3年程度は働いてほしいという意図もあるかもしれませんが、どちらかというと短期で辞めてしまった人からは退職金を没収するというペナルティ的な意味合いのほうが大きいでしょう。それなりのコストをかけて採用し、教育したのに、すぐに辞められてはそのコストを回収できないからです。

一方で、数年で結果を出すことが求められる経営層やそれに近い立場の社員に対しては、比較的短い期間でのリテンション策にも意味があるかもしれません。

しかし、こうした人材に求めるのは単に一定期間働いてもらうことではなく、成果を出してもらうことなので、通常の退職金よりも成果報酬の要素が強いものが適していると考えられます(例えば、勤務条件や業績条件を付けたストックオプション)。

となると、退職金制度によるリテンションが機能するのは、勤続10年以上、年齢でいうと30歳以上の層に対してということになるでしょうか。

例えば、会社都合退職時の支給額に対して、自己都合退職時の支給割合を、勤続10年では5割、勤続15年では7割、勤続20年以上で10割と設定すると、勤続10年~20年の期間(新卒採用なら概ね30歳代の期間)で退職金が段階的に大きく増えることになります。

したがって、この期間に当てはまる社員が転職を考えたときに、今辞めるのはもったいないと思わせることで、転職を踏みとどまらせる効果は多少は期待できます。ただその前提として、「そういえばうちの会社の退職金ってどうなってたっけ?」と思ってもらえる程度にはその存在が認識され、またそう思ったときに退職金制度の内容を容易に確認できるようにしておくことが必要でしょう。

また、定年時にまとまった額の退職金を用意しておくことで、老後のお金に対する不安を感じることなく、職務に専念してもらうという考え方もあると思いますが、その効果を測るのはなかなか難しいですね。加えて、人生100年時代と言われる中で、将来的にもその考え方のままでいけるのかどうか、改めて考えておかなければならないと思います。