中小企業を対象とした退職金の積立制度、中小企業退職金共済(中退共)は国によって運営されている制度であり、300万人以上の加入者(被共済者)がいます。今年度末(2018年3月末)は5年に1回の財政検証の時期にあたり、掛金や退職金の額の見直しなど、今後の財政運営について議論が行われています。

これまでの積立状況はどうなっていた?

中退共の積立状況の推移は以下のとおり、2012年度以降は積立剰余の状況にあり、2017年3月末時点では約3800億円の剰余金を確保しています。計算上の必要積立額である責任準備金(4.3兆円)に対しては、約9%の剰余となっています。
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2014年3月の時点では、今後の資産運用で損失が発生する可能性も勘案して、2018年3月末までに3500億円の剰余金を確保する計画を立てていましたが、すでにその水準を上回る状況となっています。

中退共の予定利率は2002年11月以降1%に引き下げられており、運用のハードルは低めとなっています。国民年金基金や企業年金連合会の通算企業年金よりも早い段階で予定利率が引き下げられ、加入者数もわずかながら増加傾向にあることから、財政は比較的健全な状態を保っています。

また、予定利率以上の運用収益を確保できた場合には、その一部を「付加退職金」として給付に上乗せできる仕組みになっており、確定拠出の性質を併せ持つ制度と言えます。

これからの財政運営はどうする?

この5年間は目標とする剰余金を確保するために、運用による利益(単年度)が600億円を超えない限りは付加退職金には回さない運営となっていましたが、目標が達成された今後は付加退職金を充実させる方向となるのでしょうか?

今月16日に開催された厚生労働省の中小企業退職金共済部会では、事務局である厚労省側から次の2案が提示されました。いずれも現行の予定利率1%を維持したうえで、
<A案>各年度の利益金の半額を、望ましい剰余金の水準(4,300億円)を下回らない範囲内で、付加退職金として支給する。
<B案>利益金が生じても、付加退職金を支給しない。
…というものです。なんだか加入者にとっては厳しい(よく言えば健全性に配慮した)内容ですね。

事務局からは、その根拠として、現在の運用環境・財政状況を踏まえたシミュレーションの結果、100回に1回の損失に耐えうる水準は4300億円程度となったことなどが示されています。

これには各委員から異論が出たようで、次回以降も議論が継続されることになりそうですが、焦点となっているのは給付を増額する際の基準であり、財政面においては、中退共は公的な退職金・年金積立制度の中でも持続可能性の高い制度であると評価できます。