先週24日、平成29年版厚生労働白書が公表されました。今年のサブタイトルは「社会保障と経済成長」。社会保障はコスト負担という経済へのマイナス面に焦点が当たりがちですが、雇用の創出や就労支援というプラスの面もあります。経済成長の関係性に着目して今後の社会保障の在り方を考えるというのが今年の大きなテーマになっています。

白書の本文や各種資料はこちらからダウンロードすることができますが、今回はその中から3つの項目について紹介します。

高齢化が進んでも支える側と支えられる側の比率は1:1

少子高齢化の進み具合を表すのに、老人を担いだ若い人が減っていく絵をよく見かけるかと思います(例えばこんなの)。確かに65歳という年齢で単純に分けると現役世代の比率は急速に低下してきていて、このままいったらどうなるのかという不安を抱かせます。

しかし問題なのは高齢者の割合が増えることそのものではなく、社会全体で支える側と支えられる側のバランスが崩れてしまうことにあります。年をとっても支える側に回る人が増えればバランスを保つことはできます。

実際のところ、下の図にあるように、日本全体で仕事に就いている人とそうでない人の比率は、年齢構成が大きく変わっているにもかかわらず、ほぼ1:1をずっとキープしています。
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今後は高齢化のペースが鈍り、就業率を向上させることで就業者の比率はむしろ上向く可能性もあります。就業率の向上は働き方の多様化とセットで進められる面もあるため、フルタイムで働く人の割合は減ってしまうということはあるものの、「高齢化が進む=支え手がいなくなる」ではないということを示しています。

ようやく上向き始めた賃金水準

一般労働者(パートタイム以外の労働者)の賃金水準は、1997年頃をピークとして、特に20歳代後半~40歳代前半にかけて長期的に低下傾向にありましたが、ここ2~3年で上昇に転じているのが読み取れます。
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40歳代前半までのところに関しては、賃金制度の見直しによる年功的な賃金カーブの抑制が一巡したと考えてよいかもしれません。

ちなみに、上のグラフは男性についてのものであり、女性の一般労働者に関しては以下のとおり上昇傾向が続いています(男性との格差はまだまだ大きいでいすが)。
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給付と負担の水準が釣り合う所得水準は500万円台後半

社会保障制度は、何らかの理由によって経済面、生活面での支援を必要とする人に対して、みんなで少しずつ負担することで支えあう仕組みです。今は支える側の人も、病気やケガをしたり、働けなくなった時には支えてもらう側に回ります。

では、所得水準で見たときに、支える側と支えられる側の境目はどのあたりにあるのでしょうか?それを表したのが下のグラフです。
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これを見ると、だいたい500万円台の後半で受給額と負担額が同程度となっていて、それより所得が低くなるほど受給額のほうが大きく、所得が高くなるほど負担額のほうが大きくなっていることがわかります。

ところで、もし消費税を上げていくとこのグラフはどう変化するでしょうか?

消費税の負担は支出額に比例して大きくなりますから、基本的に所得の高い層のほうが負担増は大きくなります。そして消費税の使用目的は社会保障の財源とされていますので、全体としては負担の増加分と同じだけ給付も増加することになります。一方で、給付については所得水準に関係なく、あるいは所得水準が低いほど手厚くなっています。

したがって、所得の低い層はより受給額のほうが大きくなり、所得の高い層はより負担額のほうが大きくなります。つまり所得再配分の機能が強化されるはずなのですが、消費税の増税はどちらかというと富裕層優遇というイメージがついていしまっているような気がします。