つみたてNISAの普及のため、金融庁がみずから「職場つみたてNISA」を導入するという発表がありました。
詳細については金融庁WEBサイトのこちらのページに掲載されています。

どんな仕組みなのか、調べていくうちに「職場つみたてNISA」と「職場積立NISA」は違うというややこしい事実に気が付きました。

職場つみたてNISAとは

今回金融庁が発表した「職場つみたてNISA」の概要は、以下のように示されています
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つみたてNISAは個人が任意で利用するものであり、口座開設等の手続きにおいて会社が関与する必要はありません(これに対してiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入には加入資格等に関する事業主の証明が必要)。ただ自らつみたてNISAを利用しようとする個人は、金融リテラシーの高い人に限定されるというのが現状でしょう。

そこで、上記のような形で職場に金融機関の担当者を呼んで説明の場(金融機関にとっては営業活動の場)を設けることで、職場を通じて従業員につみたてNISAについて知ってもらい、つみたてNISAの利用を後押ししようというのがねらいです。

また、資産形成に関する多様なニーズへの対応の観点から、従業員への情報提供にはつみたてNISAだけでなくiDeCoを含めているのも特徴的です。

職場積立NISAとは

これに対して、漢字表記の「職場積立NISA」というのが従来から存在します。詳細については日本証券業協会のこちらのページにありますが、これはもともと2014年から始まった(一般)NISAを活用して、職場を通じ、従業員に対して継続的な投資を促進しようという取り組みです。

来年(2018年)からは一般NISAとつみたてNISAのいずれかを各個人が選択できるようになるため、「職場積立NISA」においても一般NISAを利用するものと、つみたてNISAを利用するものの2種類できることとなり、証券業協会の上記ページにも、2つそれぞれの利用規約雛形が掲載されています。

また、金融庁から発表された「職場つみたてNISA」では「転勤時などの職員の利便性に配慮」して口座振替方式を採用とあるのに対して、「職場積立NISA」では給与天引きを前提とした書きぶりとなっています。

導入するならどっち?

では、今後導入するとしたら「職場つみたてNISA」と「職場積立NISA」、どちらがいいのでしょうか?

これまで投資に縁遠かった従業員に対して、職場を通じて定期積立による資産形成を促すという趣旨からすれば、非課税期間が20年間と長いつみたてNISAのほうが、より適しているといえます。一般NISAと比べて年間の投資枠は40万円と小さいですが、投資未経験者が継続的に投資を行う額としては十分な水準ではないでしょうか。

また、つみたてNISAでは対象商品が金融庁の”お墨付き”を得られたものに絞られている点も、投資未経験者にとっては重要なポイントです。一般NISAを利用した従来の職場積立NISAに対しては、金融機関が自身の利益を優先した商品の提示を行う可能性を指摘する声もありましたが、つみたてNISAではそうした危険性は小さくなります。

漢字表記の「職場積立NISA」であっても、つみたてNISAの利用を前提として導入することはできるわけですが、金融庁から発表された「職場つみたてNISA」にはiDeCoに関する情報提供も含まれています。

従業員からすると、つみたてNISAとiDeCoという似たような制度について、どちらを利用するのがいいのか、どう使い分ければいいのかが重要なので、両者を比較できる形で説明を受け、自分に合ったやり方で利用できるのがベターでしょう。事業主にとっても、給与天引きよりは口座振替にしてくれたほうが手間がかかりません。

もっとも、企業側が従業員の資産形成を促進することに必要性やメリットを感じなければ、こうした仕組みの普及は限定的になるでしょう。人生100年時代と言われる中で、キャリアだけでなくマネーの面でも従業員の自立を支援することを、長期的な観点での人材の育成や確保、活性化と具体的に結びつけることができるかどうかが課題ではないかと考えます。