今回はいきなりクイズです。

企業年金がある会社に一定年数以上勤務して定年まで勤めた場合、それ以降退職金を年金(分割払い)の形で受け取ることができるわけですが、ほとんどの企業年金では一時金(一括払い)での受け取りを選択することも認められています。

では、年金と一時金、どちらを選択する人が多いのでしょうか?

A:年金を選択する人のほうがずっと多い
B:年金と一時金、同じくらい
C:一時金を選択する人のほうがずっと多い


…答えは「C. 一時金を選択する人のほうがずっと多い」です。

厚生労働省の集計結果によると、確定給付企業年金(DB)では72%(年金と一時金の組み合わせを含めると82%)、確定拠出年金(DC)では実に94%が一時金を選択しています。
※第9回社会保障審議会企業年金部会資料より

実際、DBに関しては、ごく一部の終身年金等の手厚い年金制度を設けている会社を除き、一時金の選択割合が8割以上の会社がほとんどで、ほぼ100%という会社も珍しくありません。DCに関してはどの企業でも一時金の選択割合が圧倒的に高くなっていると思われます。

まぁ企業年金制度とは名ばかりで、”退職金積立制度”といったほうが実態に合ってますね。

ではなぜ一時金を選択する人が多いのでしょうか?考えられる理由をいくつかあげてみたいと思います。

1. もらえるものは先にもらっておきたい
今この瞬間に100万円を受け取るか、5年待って105万円を受け取るか、どちらを選ぶか聞かれたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか。

もしローンなどを抱えているのであれば、すぐに受け取って返済に充てることを考えるでしょう。これは多くの場合、経済的にも合理的、つまり「おトク」な選択になります。しかし、今まとまったお金の使い道が必要なくても、すぐにもらえるものはもらっておこうと考える人は多いのではないでしょうか。

5年後に100万円が105万円になるということは、毎年約1%の利息が付く計算になります。今はどこの銀行の定期預金に預けても、国債を買っても、1%の利息が付くことはありません。したがって、5年待つのは経済的には合理的な選択肢のはずですが、人の行動は主観により左右されるところが大きいようです。

2. 税金がおトク
DBだと年金を選択することで年2%程度の利息が付くことはざらにあります。単純に考えれば、今のような超低金利の状況の中ではかなり「おトク」な選択です。

しかし経済合理性を考えても実は一時金で受け取ったほうが有利なケースが多いです。その理由は税金です。

以前「年金受取にキビシイ企業年金の税制」にも書きましたが、一時金で受け取った場合は「退職所得控除」という大きな非課税枠があります。一方、年金で受け取った場合にも一定の控除はありますが、国からの年金と合算されてしまうこともあって一時金で受け取る場合よりも税金が高くなることが多いです。

また、会社の健康保険を抜けて市区町村の国民健康保険に入ると、年金を含めた収入に応じて保険料が決められるため、保険料も高くつくことになります。

2%程度の利息では税金や保険料で消えてしまい、総合的に考えると一時金のほうがおトクな選択になっているということです。

3. 年金受け取りは考えるのが面倒
これは特にDCに関して言えることですが、年金での受け取りには様々な選択肢がありすぎて決められない(考えるのが面倒)というのも大きいと思います。

DCの場合、年金での受け取り方法は大きく2つに分かれます。1つは保険会社の年金商品を購入する方法で、年金額は基本的に購入時に確定します。もう1つは加入時と同じように運用を続けながら定期的に資金を取り崩していくことにより年金として受け取る方法であり、受取額は運用成績によって変わります。

年金商品の購入は、保険商品がラインナップにあることが前提であり、場合によってそもそも選択肢がないこともありますが、加入しているDCプランによって複数の会社の商品が用意されていることもあり、どの会社の商品にするのか、また同じ商品でもいくつかの受け取り方法(年金の支給期間)の中からどれを選ぶのかを決めなくてはいけません。

取り崩しによる年金受け取りはさらに複雑です。まず、どの商品、どの割合で運用を続けるのか、取り崩しは何年かけて(何%ずつ)行うのか、どの商品から取り崩していくのかなど、それこそ無数の選択肢が考えられるので、どう決めるのかはかなり難しい問題です。

それを指定するための記入(入力)方法も当然複雑なものになってしまうので、書類を見た瞬間に年金選択をあきらめてしまう人も多いのではないかと思います。


…というわけで、年金受け取りを選択する人が2割程度いるというのがむしろ多いくらいにも思えてきますが、年金受け取りにもメリットはあります。定期的に一定額の収入があることで、計画的に使うことができます。DCの年金受け取りには選択肢が多すぎるとはいえ、一時金で全部受け取ったのを一から自分で取り崩し計画を立てるのよりは、選択肢が提示されている分だけまだ考えやすいはずです。

また、一時金が振り込まれた銀行の預金口座の残高が取り崩しにより徐々に減っていくのは、頭ではわかっていても思った以上に不安を感じさせます。毎月当たり前のように会社から給料を受け取ってきた会社員にとって、定期的な年金収入があることは精神的な余裕を保つことにつながるのだと思います。