今回から「クイズで学ぶ企業年金」と題して、クイズを通して企業年金の実情に迫っていくシリーズを始めます。第1回は、企業年金の加入者数について取り上げたいと思います。

企業年金とは、退職した従業員に年金や一時金が支給されるよう、会社が外部に資金を積み立てる制度のことです。日本で国が認めた制度として企業年金が誕生したのは1962年のことで、このときできたのが適格退職年金です。その4年後の1966年には厚生年金基金ができ、この2つの制度は広く普及していきました。

また、適格退職年金が誕生する前の1959年には中小企業を対象とした中小企業退職金共済(中退共)がつくられています。中退共は国(現在は独立行政法人)が運営する制度であり、各企業が運営主体となるわけではないため厳密には企業年金ではないですが、退職者への給付のために資金を外部に積み立てる点では共通しています。

長らくこれらは日本の企業年金制度の中心でしたが、バブル崩壊などを経て2001年には各従業員が自己責任で資金を運用する新しいタイプの企業年金、確定拠出年金が生まれ、翌2002年には適格退職年金の廃止や厚生年金基金の代行返上の受け皿として確定給付企業年金ができました。

その後10年の経過期間を経て適格退職年金は完全になくなり、厚生年金基金も2014年の制度改正により原則廃止の方向となっています。

というわけで、現在では中退共確定拠出年金確定給付企業年金が日本の主要な企業年金制度(外部積立制度)として実施されているわけですが、それぞれどの程度普及しているのでしょうか。

次のグラフは2017年3月現在の3つの制度の加入者数を示したものですが、A,B,Cに当てはまる制度はどれでしょうか?というのが第1回のクイズです。
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…答えは次のとおり。
A:確定給付企業年金(818万人)
B:確定拠出年金(592万人)
C:中退共(335万人)

適格退職年金や厚生年金基金からの流れをくむ確定給付企業年金が最も多く、次いで2001年に新たに誕生した確定拠出年金、最も歴史の古い中退共が3番目となっています。

ただ、2012年以降はほぼ頭打ちとなっている確定給付企業年金に対して、確定拠出年金は加入者数を伸ばし続けており、5~10年後のうちには逆転しているかもしれません。中退共も少しずつではありますが、加入者数は増加傾向にあります。

ところで、この数は会社員全体からするとどれくらいの割合を占めているのでしょうか。

企業年金は多くの場合正規従業員のみを加入対象としていることから、これを分母にもってくることにすると、2017年3月現在で3376万人となります(労働力調査より)。ということは、3制度の加入率は以下のとおりとなります。
確定給付企業年金:24.2%
確定拠出年金:17.5%
中退共:9.9%

これらを単純に合計すると51.6%となりますが、2つ以上の制度に重複して加入しているケースもありますので、何らかの企業年金制度(外部積立制度)の対象となっている会社員(正規従業員)は全体の半分以下とみてよいでしょう。

企業年金制度があること自体がその会社の退職給付の充実度を示しているとも言えますね。