少し先になりますが、来年1月にFPのスタディ・グループ(勉強会)で企業年金について話すことになりました。どんな内容がいいかな~とこれまでの経験を振り返ったときに、ふと10.2652という数字を思い出しました。

私は第一生命の企業年金数理室で年金アクチュアリーとしての職業人生をスタートしたわけですが、当時はまだ厚生年金基金と適格退職年金が企業年金の主力で、代行返上が始まろうとしていた頃でした。

そのときは主に厚生年金基金の数理計算を担当しており、厚生年金の代行部分に上乗せされる年金については保証期間付きの終身年金が当たり前でした。

確定給付型の企業年金における終身年金というのは、一時金で受給する場合と比べて非常に手厚くなっていて、当時厚生年金基金で最も一般的だった利率5.5%の15年保証期間付き終身年金の場合、60歳時点の原資(=一時金で受け取る場合の金額)が1,000万円だったとすると、年金で受け取る場合の年金年額は1,000万円を10.2652で割った金額で計算されました。 

つまり、10.2652年が経過した70歳時点で受取総額は一時金の額と同じになり、80歳時点ではほぼ2倍に、90歳まで生きた場合にはほぼ3倍の額を受給できることになります。

仮に5年経過後の65歳で死亡してしまった場合でも、15年の保証期間が付いていますから、残り10年分の給付は遺族に支給され、受取総額が一時金を下回ることはありません。

税金や社会保険料を考慮した実際の手取り額で見ると優位性は若干落ちますが、それでも圧倒的に年金を選んだほうが有利だったわけです。

その後、厚生年金基金は代行返上により急速に数を減らしていきましたが、すでに退職していた人の受給権はそのまま引き継がれているケースが多くなっています。

しかし中にはJALのように年金の減額を余儀なくされたり、年金基金の解散により将来の年金に代えて一時金で清算されてしまったケースもあります。中小・零細企業を中心とする多数の企業が共同で実施する総合型の厚生年金基金では、上乗せ部分の年金が完全になくなってしまったところもあります。

一見有利に見える選択肢であっても、その裏付けとなる財源や収益の確保が難しくなれば、予定通りの年金を受け取ることができなくなる可能性があるわけですが、退職後の長期間にわたって企業年金の将来を見通すというのは非常に難しいことです。