企業年金の役割とは何か。

法律の最初に規定されているとおり、企業年金の目的は公的年金の補完にあります。国の年金では足りない部分を補うということです。
【確定給付企業年金法 第1条】
この法律は、少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、<中略>高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受けることができるようにするため、<中略>もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
【確定拠出年金法 第1条】
この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、<中略>高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができるようにするため、<中略>もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
確定給付と確定拠出、性格は正反対でも背景と目的はほとんど同じです。

厚生労働省や企業年金連合会などの関係者は、この目的の達成のため、企業年金の普及・拡大に努めてきました。しかし、実際には企業年金は全体として縮小傾向にあります。

以下は企業年金の加入者数(各制度の延べ人数)の推移を表したグラフです(りそな年金研究所発行の「企業年金ノートNo.590」より抜粋)。1995年度末のピーク時には2,572万人いましたが、直近ではその6割程度にまで減少しています。
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また、従来企業年金の主力であった厚生年金基金では必ず終身年金が設けられていましたが、現在の確定給付企業年金において終身年金を設けているケースはごく少数です。

公的年金を縮小せざるを得ないような人口構造、経済情勢の中で、それを補えるように企業年金を充実させていくというのはやはりどこか無理があると言わざるを得ません。

では企業年金の役割は今後も縮小する一方なのでしょうか。

全体としては縮小しつつある企業年金の中で、着実に加入者数を増やし続けているのが企業型の確定拠出年金(DC)です。企業型DCでは、掛金を拠出するのは企業ですが、その資金をどう運用し、60歳以降にどう受け取るかは各加入者本人の責任により選択することとなります。いわば自助努力型の年金であると言えます。

2012年からは加入者本人が自分の給与から企業型DCの掛金を上乗せできる仕組み(マッチング拠出)が導入され、また2017年からは個人が任意で加入する個人型のDC(iDeCo)の加入対象が大幅に広がるなど、自助努力を後押しするような制度の見直しが行われてきました。

来年(2018年)には、企業型DCを実施する企業に対して、加入者に対する継続的な教育が努力義務化される一方、企業年金を実施していない従業員100名以下の小規模企業では、従業員が加入するiDeCoの掛金に企業側が掛金を上乗せできる「逆マッチング拠出」の仕組みが導入されるなど、企業による従業員の自助努力の支援を強化する動きが続いています。

企業側が給付額を約束する確定給付企業年金(DB)においても、先日の記事に書いたように、ガイドラインの改正案の中で、加入者への業務概況の周知(これ自体は年1回以上行うことが法律で義務付けられている)において、図表などを用いてわかりやすい開示を工夫することや、DBのことだけでなく、企業の退職金制度の全体像を示すことを求めています。

つまり、企業の財務的な負担増を伴う給付の増額という形での役割の拡大から、従業員の自助努力を後押ししたり、必要な知識や適切な情報を提供することで、従業員の老後資産の形成を支援する方向にシフトしつつあるということです。

こうした観点で考えれば、企業年金が果たすべき役割はまだまだあると思います。