JILPT(独立行政法人労働政策研究・研修機構)が2016年5月に公表した「高年齢者の雇用に関する調査」について、これまで3回にわたって紹介してきましたが、最後は、高年齢者の採用について取り上げます(原文はこちらに掲載)。

半数の会社で55歳以上の採用あり

2015年7月1日の調査時点において、2014年4月以降に55歳以上の中途採用のあった企業は、全体の49.7%とほぼ半数を占めています。その後も有効求人倍率は上昇傾向にあることから、半数程度の企業では、年に1名以上、55歳以上の採用を行っていると考えてよさそうです。

特に以下の業種では「採用あり」の回答が多くなっています。
  • 医療・福祉:74.7%
  • 運輸業:64.3%
  • サービス業:62.9%
  • 飲食業・宿泊業:61.8%
また、55歳以上の採用ありとした企業のうち、55~59歳での採用があったのは69.1%、60~64歳での採用があったのは65.1%と大きな差はありません(ただし65歳以上では44.0%まで低下)。

採用経路と採用理由、採用のポイント

高年齢者の採用経路については、最も多かった回答がハローワーク(55.1%)、2番目が求人誌・新聞・広告(33.0%)、3番目が縁故(17.9%)で、他の理由は10%程度もしくはそれ以下となっています。

ただ業種別にみると、情報通信業、建設業、教育・学習支援業については縁故が3割を超えており、クローズドな経路での採用が多くなっています。これに対して、飲食業・宿泊業、サービス業についてはハローワークが6割、求人誌・新聞・広告が4割を超えており、オープンな経路での採用がメインとなっています。

また、高年齢者の採用理由については、情報通信業、教育・学習支援業では7割以上、建設業で5割以上が「高い技能・技術・ノウハウの活用」と最も多い回答となっているのに対して、飲食業・宿泊業、サービス業では「応募があったから」が6割以上で最多となっており、年齢を問わず募集したら結果として高年齢者だったという結果になっています。

さらに、採用の際、重視するポイントについては、情報通信業、建設業、教育・学習支援業では知識・技能という回答が最も多かったのに対して、飲食業・宿泊業では性格・人柄という回答が最多となっています。全体では知識・技能(55.9%)、性格・人柄(41.8%)に本人の健康(40.9%)を加えた3つが多くを占めています。


これらの結果を踏まえると、現役時代に身に付けたスキル・ノウハウを活かして、別の会社で60歳以降も働く道を考えるなら、50歳代から社外でのつながりをもっておくことが重要であると言えます。一方で、仕事内容などにこだわりを持たなければ、高年齢者であっても就職の機会は広がっていると考えてよさそうです。