先日書いたとおり、2018年度の税制改正要望に企業年金関連の項目は見送った厚生労働省ですが、2018年度の予算概算要求には「中小企業に対する企業年金等の普及・充実」が新規項目として盛り込まれています。

年金時代の記事には「1,800億円を新規要求」とあり、その金額に一瞬目をむきましたが、厚生労働省の資料(こちらに掲載)を確認したところでは、1,800万円の誤植のようですね(そのうち修正されてるかもしれません)。

施策については以下のように記載されています。
簡易型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)への小規模事業主掛金納付制度の創設等に伴い、中小企業に向けた普及充実の取組みを推進するため、中小企業団体等と連携して、事業主及び関係団体を対象とした積極的な普及活動を実施する。

簡易型確定拠出年金(簡易型DC)と小規模事業主掛金納付制度(中小事業主掛金)は、いずれも昨年成立した改正確定拠出年金法により導入されたもので、遅くとも2018年6月には施行されることとなっています。関連する政省令の案はまだ出ていませんが、今年の6月30日に開催された企業年金部会の資料(こちらに掲載)には、以下のように記載されています。
【簡易型DC】
・簡易型DCに係る事業主掛金の額の算定方法は定額(勤続年数等の資格に応じて階層化可能)によるものとする。
・簡易型DC実施事業所に使用される全ての第一号等厚生年金被保険者は一律に加入者の資格を有するものとする。
・簡易型DC導入時の必要書類を、規約案、厚年適用事業所証明、労働組合等の同意、労使協議経緯書等に限定。
・業務報告書の報告事項を他年金実施状況、厚年適用者数、指定運用方法選定状況(労使協議経緯を含む。)に限定。
【中小事業主掛金】
・個人型年金加入者掛金を拠出区分期間ごとに拠出する場合は中小事業主掛金も当該期間ごとにのみ拠出可能とする。
※ 中小事業主掛金の額の算定方法は定額(勤続年数等の資格に応じて階層化可能)によるものとする。

簡易型DCは「制度設計をシンプルにする代わりに事務手続きを簡略化できる企業型DC」ですが、上記の2点目にあるように、厚生年金の適用者を全員加入者としなければならない点がネックになりそうな気がします。あとは金融機関(運営管理機関)がどこまでやる気になるかですかね…。

一方の中小事業主掛金は「従業員が加入するiDeCo(個人型DC)に会社が掛金を補助する仕組み」であり、本人がiDeCoに加入していることが前提となります。簡易型DCと異なり、会社は経費を負担する必要はありませんし、補助の額はそれほど大きくなくても従業員にはありがたられやすいと思います。

というわけで、予算が認められたとしたら、「中小事業主掛金」のほうに重点をおいたほうが効果的なんじゃないかなと個人的には思います。