先週8月25日、企業会計基準委員会(ASBJ)より、有償ストック・オプションについての会計処理に関する新たな基準案(実務対応報告公開草案第52号)に対して寄せられた意見が公表されました(こちら)。その数、個人・団体を合わせて実に253件。目を通すだけでも大変そうです(事務局の方々お疲れ様です…)。

公開草案の内容は、以前「有償ストックオプションの会計処理」に書いたとおりであり、実務上、資本取引と同様に費用計上しない扱いとなっている従業員等に対する有償ストック・オプションの発行について、今後は報酬とみなして(無償の)ストック・オプションに準じた形で費用処理することを求めています(公開草案はこちらに掲載)。

寄せられた意見については、全てを確認できる量ではとてもありませんが、ざっと見たところでは、公認会計士協会や監査法人など、監査を行う立場の団体からは、概ね賛同の意見となっているようです。これに対して、有償ストック・オプションを発行する事業会社やこれをサポートするコンサルティング会社等の立場からは、反対の意見となっており、数としてはこちらのほうがかなり多くなっています。

発行サイドとしてはこれまで費用計上不要だったのがそうでなくなるわけですから、反対は当然の成り行きです。反対側の理由は「有償ストック・オプションは投資制度であり報酬性はない」のほぼ一点に集約されていると言えます。

ただ、有償ストック・オプションの発行価額が公正価値と等しければ、新たな基準のもとでも費用は発生しないはずです(費用処理すべき金額は、公正な評価額から払込金額を差し引いた金額とされている)。ところが、会計基準上は公正な評価単価については権利確定条件(業績条件など)を考慮せずに算定し、最終的には行使及び失効の実績に基づいて費用処理額を確定していく形になっています。

したがって、あらかじめ権利確定条件を織り込んで算定した払込金額の総額と費用処理の総額は一致せず、また最終的な行使(失効)の実績によって費用処理額が変動してしまいます。

今回の問題の背景には、会計基準上は権利確定条件(業績条件等)を評価単価に織り込むことは一般に困難であるとの前提から、これを実績に基づいてあとで調整するという考え方をとっている一方で、これを(無理やり?)評価単価に反映させることで実現した有償ストック・オプションというスキームが乖離していることにあります。

仮にこの点を解消させようとするなら、会計基準上も権利確定条件を評価単価に織り込むこととしたうえで、業績条件等を適切に反映させるための規定を設ける必要があるでしょう。今回はたぶんそこまでの話にはならないでしょうけど…。

個人的には、(一定の前提の下では”妥当”な評価であっても)有償ストック・オプションの評価額を一般に説明困難なほど小さくしてしまったことが今回の公開草案ができた発端であり、多数の反対意見を受けても基本的にはこの案どおりになるんだろうなと思っています。