社会保険研究所が出版している「年金時代」という専門雑誌があります。1973年に創刊されましたが紙の雑誌は2017年3月で休刊となり、4月からはWeb版に引き継がれています(こちら)。公的年金を中心とした年金制度に関するトピックや解説を読むことができます。

その中に、かつて厚生労働省の年金局長を務めた香取照幸氏による連載記事が掲載されているのを見つけました。香取氏は、以前「何歳まで働けば年金額が維持できるかが一目でわかるスウェーデンのOrange Report」の記事で紹介した「教養としての社会保障」の著者でもあります。

その連載の第4回で取り上げられていたのが「こども保険構想」です(こちら)。以前このブログでも「『こども保険』構想をどう考えるか」で記事を書いています。

私の書いた記事も含め、この構想に対する意見の多くは「保険」という財源の調達方法の是非に焦点が当てられています。しかし、香取氏は第一の論点として給付設計、第二の論点として財源構成があり、二点目は一点目とつながっている、つまり給付の内容とのつながりで財源構成を説明できる必要があることを、まず指摘しています。

では給付設計をどう考えるのか、ということですが、まずいま目指すべき社会の姿を「普通に家族を持ち、普通に子どもを産み育てていける社会」と「将来にわたって仕事を続け、社会に貢献することができる社会」の両立であることを確認し、そのためには、子育て世代がそれぞれの状況に応じて保育サービスと育児休業を選択できるようにしておく必要があることを示しています。

そうすると、給付の内容としては、こども保険構想にあるような保育・幼児教育の無償化だけでなく、育児休業中の所得補償や休業後の雇用保障も含めて考える必要があります。これは必ずしも会社員に限った話ではなく、自営業者についても同じです。

また、育児休業中や専業主婦の人に対しても子育て支援は必要であり、それぞれの状況に応じて一時保育等の多様なサービスを用意する必要があることを指摘しています。

そのように考えていくと、「こども保険」の給付は既存の保育サービスや育児休業給付を一体化した、全ての子育て世代への支援となり、社会全体がその受益者となります。また、就労の継続による人材の確保という観点からは、企業も受益者となります。

つまり、財源については、広く国民が負担する消費税に加え、当事者である企業と現役世代の拠出(つまり社会保険料)をもとに構成する、というのが筆者の主張であると私は理解しました。

こうした考え方のもとに具体的な制度設計を進めていくと、最終的には結局誰がいくら負担するのかが問題になるのだろうと思います。それでも「こういう社会を実現するためにこういう給付が必要なのだ」という部分をしっかり示しておくことが、議論を進めていくうえで非常に重要になるのではないかと考えます。