ここ最近、大企業を定年退職した後に独立(自営)や再就職により現役で活躍している人の話を聞いたり読んだりする機会が多かったのですが、振り返ってみるといくつかの共通点が見えてきます。

1.それなりの退職金や企業・個人年金を確保している
大企業に勤めていたことや、働き盛りの頃はまだ金利が高かったこともあり、退職金や企業年金、個人年金で一定の老後資金は確保できていたというのが1点目です。経済的に苦しいから働くというよりは、自分の居場所や必要としてくれる機会を求めたことで、結果的に一定の収入も得られるようになった、という感じです。

お金があるから働かない、ということではなく、一定のお金を確保できているからこそ、ある程度の余裕をもって自分のやりたい仕事、適性を生かせる仕事を探したり、独立にチャレンジしたりすることができるのだと思います。

2.定年前の仕事での経験や人脈を生かしている
独立している人も含め、定年前の仕事と全く違うことをしているというケースはほとんどなく、前職での経験や資格、人脈を生かした仕事をしています。しかし、前職でやっていた仕事をそのまま続けるということではなく、別な形でそれを生かしています。

自分の持っている知識や経験などのお金以外の財産がどのような場で生かせるのかを、自分だけで見つけるのは難しく、他の人に見つけてもらうための機会を増やすことが重要であるように思います。

3.必ずしも定年前から計画しているわけではない
定年の何年も前から再就職や独立に向けた具体的な準備や行動を起こしていたかというと、必ずしもそうではなく、定年直前になって、あるいは元の会社で一旦再雇用されたあとで再就職先を探したり独立したりしているケースが多い印象です。

定年直前まで現場に近いところで働いていて、あまりそういうことを考える余裕がなかったということかもしれませんが、一方でそれは定年直前まで実務経験や人とのつながりを構築していたということであり、上の2につながっているとも言えそうです。


では、今の現役世代がこれから定年を迎えるにあたって、上の3つはそのまま当てはめることはできるでしょうか?

退職金や企業年金、個人年金については、残念ながら条件は悪化していると言わざるを得ません。しかしながら、今でも多くの企業では定年退職者に対してまとまった額の退職金を用意していますし、イデコ(個人型確定拠出年金)やNISAなど、税制優遇のある自己積立手段も整備されてきています。

以前ほどの有利さはなくても定年後に向けた資産形成は可能であり、それが定年後に「よい仕事」に就くための余裕をもたらすことには変わりはないと考えます。

一方で2や3についてはそのまま当てはまるところが大きいのではないでしょうか。法改正により希望者は原則として65歳まで継続して元の会社に勤務することができるようになり、60歳以降の働き方の選択肢は増え、継続勤務しつつ別の道も探るという時間的な余裕も生まれます。

しかし別の道を探るなら、早めに行動を起こすことが必要でしょう。もし定年を前にして現場を離れ、職場で実務経験を積んだり人とのつながりを構築することが難しくなった場合には、定年後の働き方を見つける良い機会だととらえ、積極的に行動してくことが重要なのだと思います。