定年後も仕事を続ける際の選択肢の1つである再就職(転職)について、少し前の調査になりますが、2016年4月に(独)労働政策研究・研修機構から公表された中高年齢者の転職・再就職調査を見てみました(こちらに掲載)。

長く務めるには転職が有利?
調査結果のプレスリリースにつけられたタイトルは「65歳以降の就業率は、64歳以下での転職経験のある人のほうが高い」。ということで、まずはこの部分の調査結果を見てみました。

65歳以上の男性について、64歳以下で転職経験なしの人の雇用率(自営業を除く就業者の割合)は11.0%であるのに対して、直近の転職年齢が55~59歳の人は23.6%、60~64歳の人は31.8%と高くなっています。定年前後の転職は、転職するほうも雇用するほうも、年齢に関係なく仕事をしたい(してもらいたい)と考えていることの表れかもしれません。

一方で自営業としての就業率は、55歳以上で転職している人は転職経験なしよりもむしろ低くなっています。より正確にタイトルをつけるなら、「65歳以降の雇用率は、64歳以下での転職経験のある人のほうが高い」となるでしょう。

なお、女性の場合も転職経験ありのほうが(そして直近の転職年齢が高いほうが)65歳以上の雇用率が高まる結果が出ていますが、専業主婦であった人についても「転職経験なし」にカウントされていることから、正確な解釈は難しいとされています。

転職は大企業から小企業に流れる
これは60~64歳の男性の転職に最もよく表れています。勤め先が従業員規模300名以上の企業である割合は転職前は40%超で転職後が15%程度、30名未満の割合は転職前が20%強で転職後が40%超となっています。30~299人規模は30%程度、官公庁は10%程度でそれぞれ転職前後であまり変わりません。

大企業に勤める人にとっては、小規模企業で必要とされているスキルやマインドを持っているかどうかが、定年前後での転職の成功のカギを握っていると言えそうです。

転職ルートで多いのは縁故
「転職・再就職の際に利用した機関・サービス(複数回答)」については、直近の転職年齢が60歳以上の男性の場合、最も多かった回答が縁故で36.2%、次いでハローワークが30.2%、3番目が前の会社の斡旋で19.5%、4番目が求人情報誌等で19.0%となっています。まずは身近なところで再就職のチャンスを探すのがいいのかもしれません。

ちなみに、第一生命経済研究所による調査(こちら)でも、定年前後の再就職先の探し方は、男性は「知人・友人の紹介」が最も多く36.8%となっています。

転職後の満足度を左右する要因
60歳未満の転職と60歳以上の転職で明確な違いが出ている点として、60歳未満では転職に伴う賃金減少が満足度を低下させる主要な要因であるのに対して、60歳以上では賃金減少は満足度に影響を与えていないことがあります。転職せずに継続雇用で元の会社に残っても、賃金は下がってしまうことが背景の1つにあるものと考えらえれます。

60歳以上の転職で満足度を高めている要素は「仕事の内容への興味」や「能力・個性・資格を生かせる」であり、要は自分の好きなこと、得意なことを仕事にできているかが重要になっています。

法律により、60歳定年後も希望すれば引き続きそれまでの会社に勤めることができるようなったわけですが、役割や処遇については60歳前後で大きく変わるケースがほとんどです。転職するとした場合にどんな機会や選択肢があるのか、どんな準備が必要なのかを調べておくことは、結果的に継続雇用を選んだ場合でも、満足度を高めることにつながるのではないかと思います。