今日から何回かに分けて「投資の超キホン」というテーマで記事を書いてみようと思います。投資というと、「自己投資」という言葉があるように、必ずしも資産運用の意味だけで使われるものではありませんが、ひとまずおカネの世界での投資を中心に書いていくことします。

おカネが持っている3つの側面

一般に、おカネの役割は「価値の尺度」「価値の交換」「価値の貯蔵」の3つにあると言われます。でも尺度と交換って結局同じようなことを言ってるように私は思うんですよね。モノやサービスに値段が付けられるということは、それらをお金で買えるということと同時に金額的な価値を比較できることを意味するからです。

なので、ここではおカネの持つ側面を次の3つに整理することにします。

1.モノやサービスと交換する
おカネのない世界で取引を行うには、物々交換(サービスとの交換でもよいですが)で取引してくれる相手を見つけなければなりません。しかしこれでは取引は非常に限られたものとなり、自ずと自給自足を基本とする生活にならざるを得ません。

会社員や公務員という職業が成り立つ、すなわち、仕事をすることで給料をもらい(労働サービスとおカネの交換)、その給料で必要なモノやサービスを買って生活を成り立たせることができるのも、おカネの存在があってこそです。

2.必要なときのためにとっておく
おカネには食べ物と違って賞味期限がありません。銀行にもっていけばタダで預かってくれますし、お札にしてもよほどの大金でなければ持ち歩きに困るようなことはありません。

なので、給料や年金のようにひと月やふた月に1回まとめて支給されるのでも毎日問題なく使えますし、余ればあとに取っておくこともできます。これが「貯蓄」です。

3.おカネでおカネを生み出す
もともとおカネそのものには直接的な価値はありません。何かと交換する(モノやサービスを買う)ことで、初めてその価値が実現することになります。

しかし、おカネが生活の隅々まで浸透し、あらゆるものがおカネで買えるようになると、おカネそのものの重要性が増し、おカネを増やす手段としておカネが使われるようになります。これが「資本」としてのおカネであり、投資とはおカネを資本に回すことだと言ってよいでしょう。

生活者にとっての投資の意味

おカネには上に書いたように「貯蓄」の機能があります。しかし1年や2年ならともかく、20年、30年とそのままの価値でとっておける保証はありません。

家計調査による生活費(消費支出)の長期推移を見ると、私が生まれた1978年は1世帯の平均人員は3.8人で1か月の平均支出は約20万円、これに対して2016年には1世帯の平均人員は3.4人で約30万円となっています。人数は減っているのに生活費は約1.5倍になっています(「1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出-二人以上の世帯うち勤労者世帯」より)。

つまり、ひと月分の生活費として20万円蓄えておいたつもりが、20日分に目減りしてしまったことになります。おカネは完全に腐ってしまうことはなくても、長期間置いておくことですり減ってしまう可能性があるのです。

これを回避する方法が投資です。おカネをそのまま置いておくのではなく、投資に回して世の中に循環させることで新鮮さを保つことができます。

平均寿命がどんどん伸び、人生が長くなったことで、おカネの価値を長く保つことの重要性はますます高まっています。生活者の立場からすると、投資はおカネでおカネを生み出すものというよりも、長期にわたっておカネの鮮度を保つためのものだといえます。