最近ESG投資という言葉を目にする機会が増えてきました。国の年金資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を採用したこともその要因の1つだと考えられます。

GPIFが7月3日付で公表した「ESG指数選定結果について」によると、投資規模は当初は国内株式の3%(1兆円程度)で開始し、将来的にはさらなる拡大を検討するとあります。

ESG投資とは

ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったものであり、これらの観点から評価の高い企業を選別して投資するのがESG投資です。その意義について、GPIFのサイトには次のように書かれています。
GPIFのように投資額が大きく、資本市場全体に幅広く分散して運用する長期投資家は「ユニバーサル・オーナー」と呼ばれます。こうした投資家が長期にわたって安定したリターンを獲得するためには、投資先の個々の企業の価値が持続的に高まることが重要です。資本市場は長期的にみると環境問題や社会問題の影響から逃れられないので、こうした問題が最小化されて社会全体が持続可能になることが、長期の投資リターンを追求するうえでは不可欠といえます。ESGの要素に配慮した投資は長期的にリスク調整後のリターンを改善する効果があると期待できることから、公的年金など投資額の大きい機関投資家のあいだでESG投資に対する関心が高まっています。
GPIFのような大規模な年金基金にとって、長期的に収益を上げていくためには投資先企業の持続的成長が重要であり、それを実現していくためにESGの要素に着目することが有効だという考え方です。

投資先企業の成長を通じてリターンを高めるという観点は、スチュワードシップ・コードと共通するものがありますね(参考記事「日本版スチュワードシップ・コードとは」)。

ESG投資の実態

冒頭に書いたように、GPIFではESG投資を採用したわけですが、GPIF自身がESGの観点から企業や個別のファンドを評価して選定しているわけではなく、まずESG指数を公募し、このうち今回は以下の3つを選定し、これらの指数に連動するパッシブ運用を行うことでESG投資を行う形をとっています。
  1. FTSE Blossom Japan Index
  2. MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ
  3. MSCI日本株女性活躍指数
1と2はESGの総合的な評価に基づく指数であり、3はESGのSのうち、さらに「女性活躍」というテーマに着目した評価に基づく指数となっています。ちなみに、FTSEとMSCIはともに国際的な株式指数を多数開発、運営している会社です。

しかし、GPIF自身が「財務分析とは異なり、ESG評価については歴史が浅いこともあり、その評価手法については、現時点でスタンダードとなるものは確立されていない。また、評価する上で必要な情報の開示についても十分とは言えない状況」と指摘しているとおり、ESGの評価軸自体がまだ固まっていないのが現状です。

これを端的に表しているのが以下の図です(GPFI資料より抜粋)。

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この図は、今回採用した2つの指数会社が共通して評価対象としている430社について、両社のESG評価順位をプロットしたものになります。

もし、両者の評価順位が完全に一致していれば、図の左上から右下までの一直線上に全ての点(企業)がプロットされることになりますが、実際にはかなりばらけているのが一目でわかります。FTSEが上位50位内としていても、MSCIの順位は真ん中(215位)以下になっている企業は多数ありますし、逆も同じです。

ESG投資については評価手法の改善や情報開示の促進が課題であり、まだまだ発展途上であることを示していると言えるでしょう。