当社には、大手金融機関を定年退職した翌営業日に入社し、以後現在に至るまで勤務しているメンバーがいます。70代半ばになった今でこそ週1,2回の勤務ですが、少し前までは他の社員と同じように週5で勤務していました。

なぜ70歳を超えても新しい職場で現役で働いてこれたのか、当人へのインタビューや私が見てきた仕事ぶりをもとにまとめてみました。

収入にこだわらない
退職金や企業年金に加え、個人年金に加入していたこともあり、贅沢しなければやっていけるだけの収入は確保できていたため、入社時には給与面のこだわりはなく、好きな仕事ができればよいというスタンスでした。

統計で見ても当時は現在より退職金の水準は高く、経済的に恵まれていた面はあったと思いますが、定年後の生活費のうち、年金や退職金、自己積立で賄える分を差し引いた残りでいくら必要なのかを、まず把握しておくことが重要です。

そして収入に関しては、定年前との比較ではなく、必要額さえ確保できていればいいと考えることで、やりたい仕事につける可能性が高くなるのではないでしょうか。

ちなみに、再就職が決まったのは定年直前で、それまで「定年後はどうするのか」という奥さんからのプレッシャーもかなりあったようです^^) 収入よりもまずは居場所の確保ということですね。

新しいことを学び続ける
当社に入社するきっかけとなったのは、証券アナリスト協会のセミナーに参加した時に、当時の社長が講演していたこと、そして前職の証券会社のグループ会社が運営していた講座を受講しており、そこを通じて紹介されたことでした。

当時は日本に退職給付会計が導入されようとしていた時期であり、これによって企業の財務的な評価に大きな影響を与えることになりました。こうした社会の新しい動きに関心を持ち、学び続ける姿勢をもつことが、自分がやりたいと思う仕事に巡り合える機会につながったのだと思います。

10年年下の人たちと交流を持ち続ける
社外を含め、同年代の人とのつながりはあっても、一斉に定年を迎えてしまえばそのあとは現役世代との直接的なつながりは失われてしまいますから、仕事を紹介してもらうのは難しくなります。しかし、10年年下の人たちと交流をもっていれば、直接情報を得ることができるので、紹介は得やすくなります。

定年前に若い人たちとのネットワークを作っておいたことが、後々の財産になっていたんだなということを実感します。

自ら手を動かし行動する
当社に在籍したことのあるシニアのメンバーは他にも何人もいますが、10年以上勤務しているメンバーはほとんどいません。短期間で退職してしまったメンバーとの一番大きな違いは行動力にあったと思います。

仕事を得るために自ら連絡をとり、フットワークよくお客様のところに出かけ、パソコンに向かって資料も作る。特に入社した当初は会社の規模も非常に小さく、手足となって動いてくれる部下がいるわけでもありませんでしたので、自分で動かないことには仕事になりませんでした。

そういう中で、自分で直接お客様を担当し、信頼を獲得してしていったことが、長く活躍できた大きな要因だったのではないかと思います。

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今回紹介したメンバーが定年を前にしていた20年前と今では社会・経済状況は大きく変わっていますが、それでも参考にできる点は大いにあるのではないでしょうか。