昨日(6月6日)確定拠出年金(DC)の運用に関する専門委員会(第8回)が開催され、一連の議論を取りまとめた報告書が確定しました(こちらに掲載)。今後、この報告書に沿って厚生労働省にて政省令や通知の案が用意され、パブリックコメントを経て正式に定められることになります。

今回の専門委員会における2大テーマは、報告書に記載のとおり、「加入者による運用商品選択への支援」と「運用商品を選択しない者への支援」であり、前者は政令で定める運用商品数の上限、後者は省令で定める指定運用方法(いわゆるデフォルト商品)の設定に関連したものです。

しかし、単に政省令に定めるべき事項のみが議論されたわけではなく、加入者の高齢期における所得の確保というDC制度本来の目的から、運用商品の選定や提示方法全般について、あるべき姿が提示されている点が重要です。最近の記事と内容が重なるところもありますが、以下に私の考える報告書の”ポイント”をいくつか挙げていきます。

加入者による運用商品選択への支援

「運用商品の選定の際に留意すべき事項」より
上限一杯まで設定する(追加する)ということではなく、むしろ、加入者が真に必要なものに限って運用商品が提供されるよう、運営管理機関等と労使が主体的に提供商品を選定し、また定期的に見直していくことが求められる
運用商品を厳選するに当たっては、①運用商品全体のラインナップが加入者の高齢期の所得確保の視点から見て、バランスのとれたものであること、②運用商品が加入者の効果的な運用に資するよう、個々の運用商品の質(手数料含む。)を十分吟味し、その選定理由を説明すること
「運用商品の提示に当たって併せて講じる措置」より
運用商品を選定・提示する運営管理機関等が、個々の運用商品の選定理由に加え、運用商品の全体構成に関する説明を行うことが適当である
運営管理機関に求められるのは、加入者の立場に立った運用商品の厳選と、全体構成に関する説明であり、企業側はそれを十分理解したうえで運営管理機関に対応していくことが求められます。35本(上限)以内に収まっていればいいというものでは決してありません。

加入者による運用商品選択への支援

「指定運用方法の基本的な考え方と基準について」より
長期的な観点から、物価、為替相場、金利その他経済事情の変動(価格変動、信用の変化等)により生ずる損失(名目・実質)の可能性(リスク)に関し、加入者集団にとって必要な考慮がなされているものであること
「指定運用方法の設定プロセスについて」より
法施行時において、法改正前より「あらかじめ定められた運用方法」を設定していた場合であっても、当該運用方法を当然に法改正後の指定運用方法に選定すべきであるということではない
「加入者への情報提供等について」より
運営管理機関等は、加入者に対し、自ら運用商品を選択し運用を行うよう促した上で、改正法に基づき、指定運用方法設定時に指定運用方法の仕組みの周知とともに、当該指定運用方法を法令の基準に基づきどのような考えで選定したのか(選定理由)を十分に説明することが基本である
報告書の参考資料にもあるとおり、現状設定されているデフォルト商品の95%は元本確保型商品(定期預金または保険)となっており、改正法においても指定運用方法を特定の種類に限定したり、あるいは特定の種類を排除したりはしないという解釈のようです。

しかし、これまでと同じように安易に定期預金を指定運用方法とすることは不適当であり、今後は物価変動による実質的な価値の損失可能性も勘案したうえで、「なぜその商品を指定運用方法としたのか」ということの説明が求められることになります。

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上記のとおり、今回の報告書は、「商品数が35以下なら今のままで問題ない」「指定運用方法は定期預金のままで問題ない」ということを示しているわけではありません。企業のDC担当者はこれを理解しておくことが必要です。

なお、報告書に書かれているのは上にあげたものだけではもちろんありません。他にも押さえておくべきポイントはあり、これについては別途まとめていきたいと思います。