退職金や企業年金を一時金で受け取る場合、税制上は退職所得となり、給与での受け取りなどに比べて大きな優遇措置を受けられます。しかし、退職に起因せず一時金を受け取ることになった場合には、退職所得とはならないことがあります。例えば、退職金や企業年金制度の改廃に伴い支払われる一時金は「退職に起因しない」ものとなります。

では、次の一時金はどの所得に分類されるでしょうか。
  1. 確定拠出年金(DC)の導入に伴い退職一時金を廃止し、それまでの勤務期間に係る退職金相当額については一律精算(廃止時点で受け取り)することとなった場合の一時金
  2. DCの導入に伴い退職一時金を廃止し、それまでの勤務期間に係る退職金相当額についてはDCに移すが、従業員の選択により精算も可能とした場合の一時金
  3. 確定給付企業年金の廃止に伴い年金資産の分配を受ける場合の一時金
  4. 中小企業退職金共済の解約に伴い解約手当金として受け取る場合の一時金
まず1については、国税庁の所得税基本通達30-2にある「新たに退職給与規程を制定し、又は中小企業退職金共済制度若しくは確定拠出年金制度への移行等相当の理由により従来の退職給与規程を改正した場合において、使用人に対し当該制定又は改正前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与」に該当し、退職所得になると考えられます。

しかし、これに続く注意書きに「上記の給与は、合理的な理由による退職金制度の実質的改変により精算の必要から支払われるものに限られるのであって、例えば、使用人の選択によって支払われるものは、これに当たらないことに留意する。」とあることから、2については給与所得になると考えられます。選択肢があるかどうかで税金が変わってくるということですね。

次に、3と4については、一時所得の扱いとなっています。退職ではなく外部積立制度の終了に起因する一時金であるため退職所得にはならず、かといって会社から直接支給されるものではない(会社があらかじめ外部に積み立てておいた資産から支給される)ため給与所得にもならない、ということなのでしょう。

一般には、税制優遇の大きい順に「退職所得>一時所得>給与所得」となりますから、上記1~4について、税引き前の金額は同じだったとしても、手取りにすると差が出ることになります(1が最も有利で2が最も不利、3と4はその間)。

従業員にとってはどれも同じ「退職金の途中精算」に見えると思うのですが、税の仕組みというのは本当にわかりにくいですね。