今年(2017年)1月より確定給付企業年金(DB)で設定可能となった「リスク対応掛金」。3月末に財政決算を迎えたDBでは、今後(あるいはもうすでに)受託機関から決算報告とともに、リスク対応掛金の提案や試算結果を受けることになるのではと思います。

従来は、積立不足がなければ任意に(損金算入される)追加の掛金を拠出することはできませんでしたが、制度改正により、将来発生するかもしれない損失(運用資産のリスク等に応じて算定)の範囲内であれば、現状積立不足でなくてもリスク対応掛金を追加できるようになりました。概要は厚労省のこちらのページに掲載されています。

リスク対応掛金の導入ニーズがある企業には、次のようなタイプがあると考えられます。

1.景気変動の影響を受けやすい企業

DBの積立不足が発生して追加の掛金が必要になるときというのは、景気の悪化と重なるケースが多く、企業の業績も悪化していて追加掛金の負担が難しくなります。したがって、景気のよい余裕のある時に掛金を積み増しておくことで、将来景気が悪化したときの追加掛金の負担を減らすことが期待できます。まさに、今回の制度改正の趣旨に沿ったものです。

2.予定利率の引き下げが難しい企業

昨今の超低金利の運用環境のもと、財政の健全性を維持するためには予定利率の引き下げが望ましい状況であっても、掛金の増加幅が大きすぎて実施できないケースもあるかもしれません。

こうしたケースにおいて、予定利率は据え置きつつも、当面想定される利差損(予定利率に対する運用収益の不足)をカバーするためのリスク対応掛金を、負担可能な範囲で設定しておくことが考えられます。

3.今後非継続基準に抵触しそうな企業

DBの貸借対照表上は不足はなくても、もう一つの積立基準(非継続基準)である最低積立基準額に対して不足がある場合には、追加掛金が必要となる場合があります。

最低積立基準額を計算する際の予定利率(割引率)は30年国債利回りの過去5年平均を使用することとなっており、このままいくと今後さらに利率が低下し、最低積立基準額が増加して非継続基準に抵触しやすくなることが予想されます。

<参考>国債利回りの推移(当社Pmasサイト)

したがって、今後非継続基準に該当しそうな企業では、あらかじめ掛金を積み増しておくことでこれを回避するということが考えられます。

4.手持の余裕資金を活用したい企業

手持資金に余裕があり、利益の出ている企業であれば、DBの掛金を積み増すことで損金算入のメリットを受けることができます。以下のとおり、企業の保有している「現金・預金」は近年増加傾向にあり、余裕資金の活用を考えている企業は増えているのではないかと思います。
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(財務省法人企業統計調査2015年度版より)


以上のようなケースでリスク対応掛金の活用が考えられる一方で、リスク対応掛金を含めたDBへの掛金は、加入者や受給者への給付以外には使えない(企業に戻すことはできない)点に留意が必要です。

また、将来的に積立剰余が拡大しても、積立比率150%(※)の「積立上限」に達しない限りは、定常的に拠出している標準掛金を減らすことはできません。つまり、他の用途には使えないところへ必要以上の資金を長期間置くことになってしまう可能性もあるということです。

※「保守的な前提で算出した数理債務」と「最低積立基準額」の大きい方×1.5

したがって、特に上記4のようなケースでは、剰余が積み上がった場合に、それを給付増額(純粋な増額のほか、退職一時金からの移行割合拡大を含む)や他制度(確定拠出年金やリスク分担型企業年金)への移行のための原資として活用する余地があるかどうかも、リスク対応掛金の設定にあたっての判断材料になると考えます。