今年度に入ってから、選択制の確定拠出年金(DC)を実施しているいくつかの会社の担当者と話をする機会がありましたが、いずれの会社も新入社員のDC加入率はそれなりに高いとのこと。若い人ほど「国の年金はあてにできない」という考えがあるのかもしれません。

とはいえ、自身の老後ははるか遠くにあり、社会人としての家計の感覚もまだない新入社員が、それぞれのメリット・デメリットを見極めて自分で判断するというのは難しいでしょうから、最初にどのようなスタンスで説明するのかによって結果は大きく変わってくる可能性があります。

老後資金を自分で積み立てる必要性や、税金・社会保険料負担の軽減メリットを強調すればDCの加入率は高まるでしょうし、60歳まで引き出せない点や、一旦DCを選択すると任意に脱退することはできない(逆にDCに加入するのは後でもできる)点を強調すれば、DCの加入率は落ちるでしょう。

また、選択制のDCが既存の退職給付制度の一部(または全部)を移行する形で導入されたのか、あるいは給与・賞与を原資として導入されたのかによっても説明の仕方は変わってくるかもしれません。前者だと「DC加入が原則だが、希望すれば給与への上乗せ代えることもできる」、後者だと「給与の一部について、希望すればDCの掛金に代えることもできる」となり、どちらが「デフォルト」なのかによってもDCの加入率は違ってくると考えられます。

(もっとも、新入社員にとって、DCが退職金由来なのか給与由来なのかで本質的な違いはないと思いますが。)

となると、各社において選択制のDCをどのように位置づけているのかが、自ずと加入率に反映されていくはずですが、加入時教育を担当する講師の話し方などによっても影響を受ける可能性は十分にあり、年によって加入率が落ちてしまったりということも起こり得ます。

そして、入社直後の選択は後々まで影響を及ぼす可能性が高いと言えます。「DCにはいつでも加入できるからとりあえず給与としてもらっておいて、後でじっくり考えよう」という人は、結局そのままになりがちだからです。

といったことを考えると、入社時の選択結果を踏まえたうえで、入社2年目の社員を対象として改めて選択の機会を明示するのが望ましいでしょう。全員を集めてセミナー形式での研修を行うのが難しければ、加入実績を記載した資料を配布するなどしたうえで、改めて意思表示をしてもらうことも考えられます。

タイミングとしては、例えば入社2年目の6月から住民税の天引きが始まるのを契機として、7月に自分の給与明細を見ながらDCの税制メリットを絡めて説明するというのもいいかもしれません。

新人研修の限られた時間の中で、DCに加入する・しないの選択についても説明するとなると、その先の運用商品については詳しく説明する余裕はなくなってしまいます。そうした意味でも、特に選択制をとっている会社では、加入実績や運用実績を踏まえた継続教育の機会を早い時期に確保しておくことが重要と考えます。