4月18日に厚生労働省で開催された確定拠出年金(DC)の運用専門委員会(第5回)の議事録がこちらにアップされていたので、早速見てみました。

先日「DC運用商品の「不指図率」は定期預金の本数次第?」の記事に書いたとおり、今回からDCのプランごとの運用商品数の上限と、デフォルト商品の設定基準について、具体的な議論が始まっています。

運用商品数のカウント方法

運用商品数の上限に関しては、商品数のカウントの仕方が1つ論点としてあがっています。

これに関して、ターゲットイヤー型の商品については資産構成を変えていく時期が異なるだけで運用方針は基本的にすべて同じであり、仮にこれをデフォルト商品に設定したとしても、各加入者の年齢に応じて1つ決めることができるので、グルーピングして1本と数えても問題ないのではという意見が出され、それに対する大きな異論はなかったようです。

一方で、株式の割合が3割、5割、7割のような形で複数のパターンがあるバランス型(ライフサイクルファンド)については、それぞれ運用方針も異なるため、別々の商品してカウントするという方向性になりそうです。

上限の本数自体の設定については、先日の記事にあった「36本」というのが今後の議論の中での最大値になりそうですが、10本程度で十分という意見もあり、この幅の中で次回以降、議論が進められることになりそうです。

デフォルト商品の位置づけ

もう一つのテーマであるデフォルト商品の設定に関しては、そもそもデフォルト商品をどのように位置づけるのかが論点になっています。1つは、
  • DCにおいては加入者が自ら商品を選択するのが大原則であり、デフォルト商品は例外的な措置。長期間デフォルト商品のまま置いておくことを前提にすべきではなく、自ら選択するように働きかけていくのが基本。
という考え方であり、もう1つは、
  • どうやっても選択しない(できない)加入者は一定数存在するので、最大公約数的に長期運用に適した商品を設定しておく。
という考え方です。

前者の考え方だと、加入者が自ら運用指図を行うまでの一時的な資金の置き場所としては定期預金がよいということになりますが、後者の考え方だとバランス型の投資信託という方向性になるのだと思います。

法律上は、運用の指図は加入者が行うことが大原則としてある一方で、「指図しなければならない」とまでは規定しておらず、デフォルト商品を設定する場合には「長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図るためのものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない。」とされていることから言えば、基本的には後者の考え方になりそうな気がしますが、法的な観点については事務局で改めて整理することになるようです。

ただデフォルト商品の設定は必須ではないため、運用商品の選択は加入者が自ら行うという原則的な考え方のもと、デフォルト商品を設定しないこととした場合に、それでも運用の指図が行われなかったときには待機資金として元本割れのないように置いておくという考え方になるでしょう。これは改正法で追加された「指定運用方法」とは別物と考えられますので、そのへんの整理も必要になるでしょうね。

あと議事録を見ていて個人的に思ったのは、加入者に自ら商品を選んでもらうために、あえてデフォルト商品に投資信託を設定するという考え方もあるのではないかということです。加入者にとっては自分で定期預金を指定しなければ元本割れの可能性のあるものに投資されてしまうので、商品の選択について真剣に考えるようになるのではないかと思います。

そうなると、事業主側も商品の選択についてこれまでよりも丁寧に説明するようになるでしょう。もっとも、元本確保型がデフォルト商品に設定できないとなると、責任を負いたくないのでデフォルト商品は設定しないという企業が多くなる可能性は十分に考えられますが…