以前「改革の本丸は年金よりも医療介護」の記事の中で紹介した書籍「ちょっと気になる社会保障」の続編、「ちょっと気になる医療と介護」を読んでいるところです。

ちょっと気になる医療と介護
権丈 善一
勁草書房
2017-01-28


前回は年金制度に対する誤解を解くことに頁の大半を割いていた感じでしたが、今回は「改革の本丸」である医療と介護についてどのような改革が進められようとしているのか、これからの姿を中心とした内容となっています。将来の医療・介護保険制度に関心のある方にとって、非常に勉強になる本だと思います。

前著では、医療介護制度改革の方向性として「地域包括ケア」という枠組みが紹介されていましたが、今回はその具体的な形の1つとして、「地域医療連携推進法人」があげられています。

今後人口の高齢化がさらに進むにつれ、医療介護のニーズ総量は確実に増えていきます。各地域においてそのニーズに応えられるようにするには、個々の地域の高齢化の進み具合やその他の個別の状況に応じた、医療・介護施設の定員やそこで働く人たちの確保・調整が大きな課題となります。

供給側のリソース(人材と資金)が限られる中で、現在のように地域において病院等の各施設が経営の独立性を保って競争状態にある中では、こうした調整を行うことは非常に困難です。そこで、複数の施設を連携する非営利の法人を設けることで、競争から協調へと舵を切っていこうというのがその趣旨です。

ちょっとググってみたところでは、法令上は今年の4月2日から施行されており、同日付で愛知、兵庫、広島、鹿児島の4県が、計4法人を全国で初めて認定したとのこと。愛知の尾三会は12市町の施設が参加しているようです(こちらを参照)。また検討中のところを含めると、全国で40件以上の設立に向けた動きがあるようです(こちらを参照)。

各施設において、こうした枠組みに参加するメリットとしては、備品購入の交渉をまとめて行うことによるコストの削減や資金の融通といった財務上のものに加えて、病院ごとに機能分化することで診療科を再編したり、医師の配置換えや交流、共同研修といった組織・人事上のものも想定されています。

一方で、ガバナンスに関しては、推進法人の総会決議において各参加施設とも平等に議決権をもつこととされたため、リーダーシップを発揮したい医療法人にとっては使いづらいといった面もあるようですね(こちらを参照)。

老後に向けていくらお金を貯めたとしても、必要なサービスを買える(提供してくれる)場や人材が不足して”品切れ”状態になっていたら意味がありません。自分が住んでいる地域の医療介護への対応がどうなっていて、今後どんな計画になっているのか、老後を考えたときには、お金の問題と同じかそれ以上に関心を持つべきなのかもしれません。