4月19日、人事院による退職給付についての調査結果が発表されました。
結果の詳細は人事院のこちらのページからダウンロードできます。

この調査は、上の記事にもあるとおり、退職給付に関して国家公務員の支給水準を民間企業と比較することで、その格差の見直しを図ることを目的としており、2006年からほぼ5年おきに実施されています(今回発表された結果も調査自体は2016年に実施されたものと思われる)。

厚生労働省の就労条件総合調査における退職給付の調査(こちらも5年おき)と同様に、調査の対象範囲が広く、企業規模や退職事由等に応じた詳細な結果のほか、採用している制度や退職金の算定方法に関する項目も公表されているため、各企業が自社の退職給付制度について検討する際の参考資料としても活用できます。

(厚労省の調査と内容は重複しているので一緒にやればいいのにと思いますが、なかなかそうはいかないんでしょうね…)

調査項目のうち、退職給付の水準について前回(2011年)と今回(2016年)を比べてみると、ほぼ大卒の社員で占められていると思われる勤続37年の定年退職者では、
  • 2011年調査:2584万円
  • 2016年調査:2515万円
とやや減少しています。

しかし、以前「退職給付の水準は本当に低下しているのか?」の記事の中で紹介した厚労省の調査に比べると、その減少幅はかなり小さくなっています。

厚労省の調査による勤続35年以上の定年退職者の支給額は以下のとおりです。
  • 2008年調査:2491万円
  • 2013年調査:2156万円
グラフにするとこんな感じ。
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厚労省の調査で金額が大きく減っている要因には、上の記事の中でも書いたとおり、確定拠出年金(DC)からの支給額が反映されていない可能性があるのではないかと私は見ているのですが、今回発表された人事院の調査では、
確定拠出年金(企業型)については、退職時点における事業主拠出分の個人別管理資産額を現価とすることを原則とし、本人拠出を行っているなど事業主拠出分の個人別管理資産額を把握できない場合には、事業主拠出額、拠出期間及び他の退職給付制度からの移換額を基礎に現価額を算出することとした。
とあり、少なくとも調査主体である人事院側では、退職給付の金額にDCを含めるという意図が明確になっています(実際に使用された調査票の様式は発表資料にはなかったので、その意図通りに記入されるような形になっていたのかどうかまでは確認できませんでしたが)。

というわけで、やはり厚労省の調査結果は注意して見る必要があるのではないかと思います。双方とも給付額の制度ごとの内訳も開示してくれるとはっきりするんですけどね。

ちなみに厚労省の就労条件総合調査による次回の退職給付の調査は、これまでと同じサイクルでいくと来年(2018年)中に実施、公表ということになります。