企業型・個人型を問わず、確定拠出年金の運用では、積立期間において掛金をどの商品に配分するかということに加え、給付の受け取り時期が近づくにつれて、これまでに積み立てた資産の運用をどうするかということが非常に重要となります。

先日、「金融機関別iDeCoお勧め商品~アセット・ロケーションのその先」の記事の中で、20年以上の長期積立投資なら、掛金の配分は外国株式の運用商品に1点集中でも問題ないのではというようなことを書きましたが、仮にそうした運用を続けて50歳時点で1000万円貯めることができたとして、65歳で資金を引き出す計画を立てるとき、残り15年間の運用をどうしていったらいいでしょうか。

「1000万円あれば十分」という判断ができれば、そこですべて定期預金にしてしまうというのも1つの考え方ですが、資金の引き出しまではまだ15年あり、医療や介護を含めた「モノ・サービス」の値段が上がっていく(インフレ)の可能性を考えると、運用を続けて資産を増やしておきたいところでもあります。

仮にそのまま15年間、外国株式で運用を続けた場合、どうなるでしょうか?もちろん将来のことはわかりませんが、過去のデータを見ることによって、将来どのようなことが起こる可能性があるかを把握することはできます。

下のグラフは、「DC外国株式インデックスファンド」の基準価格のデータをもとに、2002年末に1000万円で運用を開始したとして、2016年までの各年末時点での資産額の推移を示したものです。
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途中、2008年のリーマンショックによる大幅な下落がありましたが、その後回復し、2016年末時点では2706万円まで資産を増やすことができています。もし今年何事もなく、そのままの基準価格で推移すれば、15年前の2.7倍の額を受け取ることができます。

しかし、もし今年リーマンショックの再来があったらどうなるでしょうか。2008年の下落率を当てはめてグラフを作成するとこうなります。
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資産額は半分以下の1200万円余りになり、1 年間で約1500万円もの資産を減らしてしまうことになります。

それでも運用開始時の1000万円よりは増えていますが、精神的なダメージは計り知れず、去年の残高をもとに将来の計画を立てていたとしたら、大幅に計算が狂ってしまいます。

このような危険を回避しつつ、運用を継続するにはどうしたらいいでしょうか。それには、長い時間をかけて少しずつ定期預金などの安全資産に移していくことです。

以下のグラフは、スタート時の前提は上と同じにしつつ、1年経過後にその時の投資信託の残高の1/15の金額を定期預金に移し、また1年経過後に1/14の金額を移し、そのまた1年経過後に1/13の金額を移し、…というのを繰り返していった場合の推移を表したものです(定期預金の金利は0として計算)。
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上のグラフと比べると年数が経つにつれて資産額が安定してきているのがわかると思います。2016年末時点の残高は約1800万円と、上のケースよりはだいぶ劣りますが、それでも2002年時点の1.8倍まで増やすことができています。

仮に今年、リーマンショックの再来があったとしても、投資信託の残高はかなり小さくなっているので、損失額は上のケースと比べて非常に小さくて済みます。4

理想を言えば、リーマンショックのような下落が起こる直前に定期預金に移せるのが一番いいですが、それを事前に察知するのは不可能と考えておくべきでしょう。

資産を積み立てていくときと同じように、資産を取り崩して(預金に移して)いくときも、定期的に長い期間をかけて行うことで、運用を継続しつつ、想定外のダメージを受ける危険性を減らすことができるのです。

<参考記事>
DCの給付受け取り時期に向けた運用の具体的対応例