昨日(4月5日)、確定拠出年金の運用専門委員会(第4回)が開催され、運営管理機関を代表して運営管理機関協議会からのヒアリングが行われました。関係団体からのヒアリングはこれで最後のようです。

<これまでの運用専門委員会に関する記事>
第1回:デフォルト商品と商品本数上限の議論が始まる
第2回:DC運用商品の規制に対する業界団体の意見
第3回:重視したいiDeCoに対する一般個人の反応

運営管理機関(運管)としての意見は第2回の中でも聞かれたところですが、今回の資料(こちらに掲載)を見たところでは、特に事務対応上の課題について詳しい説明がなされたようです。

商品の除外や入れ替えにあたっての課題

運用商品の本数に上限を設けると、すでにその本数を超えてしまっているプランにおいては商品を除外する必要がありますし、上限に達したプランにおいて新しい商品を採用する際には、古い商品を除外して入れ替える必要が発生します。

これに関しては、加入者への除外の通知や同意書の発送・回収、説明や照会対応にかかる事務負荷やコストが大きい点が指摘されています(改正法の施行以後に導入された商品については除外手続きが緩和されているが、現在すでに採用されている商品については、それを選択している加入者全員の同意が必要)。

手続きの緩和により、改正法施行後の商品については、一定期間意思表示がない場合は同意があったものとみなした上で、商品選択者の2/3以上の同意により商品の除外が可能となるため、同意書の回収にかかる事務負荷は軽減されることになりますが、同意していない(同意したつもりのない)加入者の不満や不信を招くのではという心配は残るでしょう。

商品の入れ替えに関しても、現状では商品の除外が困難なため、例えば、信託報酬のより低いパッシブ運用商品を追加したあとも、従来の割高な商品がそのまま残ってしまうようなケースもあるようです。

仮に商品の入れ替えを実行する場合でも、その通りに運用商品の切り替えを推奨することは個別商品の推奨にあたるため、法令に抵触する恐れがあります(これについては、本人がスイッチングを行わない場合は、デフォルトで切替後の商品を設定しておくことを認めてもよいのではと思います)。

こうした点を考えると、運管としては、現在採用されている本数に対してある程度余裕を持った上限設定にしてほしいところでしょう。

なお、資料には加入者記録の管理を行っている運管4社から集計した商品数別のプランの分布状況が掲載されおり、これによると、
  • 20本を超えるのは全体の23.8%
  • 25本を超えるのは全体の8.3%
  • 30本を超えるのは全体の2.3%
 となっています。

デフォルト商品設定に関するシステム対応

私も今まで知らなかったのですが、加入者の記録管理を行っている運管大手2社(NRKとJIS&T)では、デフォルト商品に関するシステム上の取り扱いが異なるようで、JIS&Tではデフォルト商品の設定を必須としている一方で、NRKでは必ず運用指図(運用商品の選択)があるという前提でシステムが設計されているようです。

このためNRKでは、
公布後2年以内案件施行時における指定運用方法及び未指図管理資産に関するシステム開発は、これまでにない大規模な開発となり、開発が完了するまでの期間、出来る限り運用指図を呼びかけるなどの運営を実施する必要があるため、制度運営に大きな支障が生じる。
とのことです。

ただ実務上はこれまでもデフォルト商品を仮登録するなどして対応してきており、改正法の施行が具体的にどのような影響を及ぼすのかは、資料を見ただけではよく分かりませんでした。

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確定拠出年金制度の円滑な運営には、事務処理や管理システムが適切に対応できることが大前提となり、そうした観点からはその中心を担う運管からのヒアリング結果は考慮すべき意見であるといえます。

一方で、商品数の上限規制に関しては5年の猶予期間があり、デフォルト商品に関しても実務上は従来から存在している取り扱いであることを考えれば、あくまで基本となるのは「加入者ファースト」であって、その中で事務対応やシステム対応上の問題ができるだけ生じないような方法を考えていくことが求められるでしょう。