前回の記事では、「何のために」「どの仕組みを使って」「何に投資するのか」ということについて、私自身のケースをもとに1つの例を示しましたが、今回は、これから将来に向けてお金を貯めよう(増やそう)という計画を立てるにあたっての、私なりの考え方を示したいと思います。

人生の3大資金

長い人生の中で必要となるまとまったお金には、一般に次の3つがあります。
  1. 住宅資金
  2. 教育資金
  3. 老後資金
ただ必ずこの3つが必要になるというわけではないですし、必要な資金の額も人それぞれですので、(今回は詳細については割愛しますが)まず自分に必要な額を把握するということが重要となります。ここでは、それぞれ1000万円を積み立て目標額に設定しておくことにします。

老後資金として1000万円というと、少なすぎるのではと思うかもしれませんが、もし退職金が2000万円あれば、国からの年金のほかに、合計3000万円の資金を確保することができます。
【参考記事】必要な老後資金に正解はない

これら3つの資金については、それぞれ必要となる時期が異なります。一般的には、
住宅資金(住宅を購入する時期)
→教育資金(子どもが大学に入学する時期)
→老後資金(自分が老後を迎える時期)
の順番になります。

ここでは、それぞれ「10年以内」「10~20年後」「20年以上先」として、金額とともに円グラフに表すと、次のようになります。
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必要時期に応じた積み立て手段

目標額が決まったら、次はこれらの資金を積み立てる手段について考えます。最も早く必要となる住宅資金については、定期預金や財形住宅貯蓄など、元本保証のあるもので確実に積み立てておきたいところです。

これに関しては、実は私も過去に痛い目に合ってまして、諸々の事情により思っていたよりも早く住宅を購入することになり、損失の出ていた株式や投資信託を売却することになってしまいました。少なくとも5年以内に必要となる可能性のある資金については、無理に運用することはないと思います。

一方で10年以上先に必要となる資金については、必要額そのものが変動する可能性も大きくなりますし、投資を考えてもいいでしょう。教育資金に関しては、2018年からスタートする「積立NISA」が有力な選択肢になると思います。

積立NISAは、現行のNISAよりも1年あたりの投資枠は小さいですが(40万円)、運用益が非課税となる期間が20年と4倍に延び、長期投資には有利です。夫婦で利用すれば、10年で800万円を積み立てることができます。

積立NISAでは、購入できる商品が、手数料が低い等の条件を満たす投資信託に限定される予定ですが、これは長期投資に適した商品が選びやすくなるという点で、むしろメリットだと言えるでしょう。

積立NISAの投資枠を次の老後資金に使う場合は、教育資金にはジュニアNISAを活用することも考えられますが、子ども(口座開設者)が18歳になるまで引き出しに制限がある点に注意が必要です。

教育資金の準備というと、最初にあがるのは学資保険かもしれませんが、商品設計が複雑になりがちで手数料がいくらかかっているかよく分からない保険は(ほかの商品では代替できない)万一の場合の保障を目的としておくというのが、私の考え方です。
【参考記事】学資保険は入るべきか?

さらに長期の資金となる老後資金に関しては、iDeCo(個人型確定拠出年金)が最も有利です。原則として60歳まで引き出せない代わりに、掛金が全額所得控除されるため、例えば所得税・住民税合わせて税率20%なら、実質8万円の負担で10万円を積み立てることができます(但し一定の手数料負担あり)。

勤め先の会社で確定拠出年金に入っている場合は、iDeCoに加入できないこともありますが、マッチング拠出や選択制を導入しているケースでは、これらを利用することでiDeCoと同等(あるいはそれ以上)のメリットを得ることができます。
【参考記事】企業型DCで従業員拠出を可能にする3つの方法

ただ確定拠出年金の年間積立額の上限はあまり大きくないため(詳細はこちら)、これだけで目標積立額に達しない場合は、上記の積立NISAなども併せて活用するとよいでしょう。

生命保険会社の個人年金にも保険料の所得控除はありますが、控除枠は確定拠出年金よりもさらに小さく、超低金利により実質的な利回りは非常に低くなっているため、これから加入する商品としてはあまり魅力的とは言えません。

これらの積立手段を先ほどの円グラフに加えて表すと、次のようになります。
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何で運用するか

NISAや確定拠出年金では具体的な運用商品を多くの選択肢の中から選ぶことができ、これによって資金の運用先が決まります。運用資産の種類には様々なものがありますが、大きくは「株式」と「債券」の2つであり、そのほかには不動産などがあります。

債券よりも株式のほうが大きな運用益を期待できますが、一方で値動きが大きく、リスクも高くなります。資金が必要となる時期が近ければ近いほど、損失が出た場合のリカバリーが難しくなりますから、老後資金は株式中心、教育資金は債券中心の運用にしておくというのが1つの考え方です(残り期間に応じて、株式→債券→預金とシフトしていく)。

確定拠出年金(老後資金)であれば、通常、商品ラインナップの中に日本の株式や外国(先進国及び新興国)の株式に投資する投資信託がありますから、これらのうち、信託報酬(運用の手数料)が低いインデックスファンド(パッシブファンドとも言う)が候補となります。

日本と外国の配分に関しては、例えば、全世界の株式を対象としたMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI、国内でいえば日経平均やTOPIXにあたるもの)では、
日本:外国(先進国):外国(新興国)=1:8:1
くらいの割合になっていますので、国内外を問わず分散投資するという意味で、基本は外国株式(先進国)とし、これに日本の株式や新興国の株式を加えるという考え方でよいでしょう。

一方、積立NISA(教育資金)に関しては、モーニングスターのサイトから「グローバル債券」の区分で投資信託を検索し、信託報酬の低い順に表示させると、以下のようになります。
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(クリックして拡大)

これらが積立NISAの対象になるかどうかは現時点ではわかりませんが、もし対象となるのであれば、候補として考えてよいでしょう。購入したい投資信託が決まれば、それを扱っている金融機関でNISA口座を開設(または移行)します。先に金融機関を選ぶのではありません(これはiDeCo口座を開設するときにも言えることです)。

上記の内容をさらに円グラフに加えると、次のようになります。
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<2017/5/9追記>
債券のみを投資対象とする投資信託は、残念ながら積立NISAの対象にはならないようです。したがって、現行のNISAを利用するか、積立NISAの対象となる投資信託の中で債券への投資割合が高いバランスファンドを選ぶかになりそうです(詳しくはこちらの記事)。
<追記終>

今の積立額と将来の目標額を比較して今後の計画を立てる

上で紹介した配分の考え方を1つのモデルとして、
  1. 今の積立金額を表した円グラフ
  2. 将来の目標積立額を表した円グラフ
を作成してみましょう。

今後の積立方法を見直すとしても、すでにこれまで積み立てたものについては焦って解約する必要はありません。例えば、20年以上前に契約した貯蓄性の保険や個人年金であれば、今よりも高い予定利率が適用されていますので、解約しないほうが有利だと言えます。

保険や個人年金に関しては、今後の保険料の支払いは止めつつ運用は継続する「払い済み」という選択肢もありますので、そうした点も考慮しつつ、1の円グラフをもとに2を作成するとよいでしょう。
<参考記事>生命保険の切り替え手順~「払い済み」という選択肢

そして、1の2の差を埋めていくのが今後の積立計画となります。基本的には、より早い時期に必要となる資金から優先して積み立てていくことになりますが(上の例なら住宅→教育→老後)、老後資金や教育資金についても、少額であってもより早い時期から始めることでリスクを取った運用ができるようになるので、そのあたりのバランスをとって「3. 今後1年間の積立予定額を表した円グラフ」を作ってみましょう。

以下に、円グラフを作成するためのエクセルファイルを載せましたので、自分用にカスタマイズして使ってみてください。新年度が始まるこの時期、将来の資金計画について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

3大資金の積立計画表.xlsx(右クリックして「名前を付けて保存」)

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確定拠出年金の運用は何%で見込むべきか?