昨日(3月29日)、年度末を直前にして、企業会計基準委員会(ASBJ)から、債券利回りがマイナスになった場合の、退職給付債務計算に用いる割引率の取り扱いについての最終基準(実務対応報告)が公表されました(こちら)。

ただ「最終基準」といっても、この2017年3月31日から2018年3月30日までの1年間に限定した暫定的な取り扱いを定めたものであり、本当の意味での最終結論は先送りとなっています。

基準の内容自体は先月の公開草案とほとんど変わっておらず、「補足説明」にあたる結論の背景のところで多少表現の見直しがあったくらいで、1年前に公表された2016円3月末決算での取り扱いに関する「議事概要」の内容とも実質的にはほぼ変わっていません(まぁこのタイミングで結論変えられたら関係者は困っちゃいますけどね…)。

唯一変更があったといえるのは、昨年の議事概要では、マイナス利回りとなった場合の割引率は「マイナスの率をそのまま用いるのが原則で、0止めするのも許容する」とも受け取れる内容だったのが、今回の実務対応報告では2つの方法に優劣をつけるものではないことが、公開草案に対するコメント対応表(こちらに掲載)の中に明記されています。

コメント対応表に関しては、これ以外の部分も含めて前回の企業会計基準委員会で聞かれたとおりの内容となっていますが(参考記事「マイナス金利対応の公開草案へのコメント」)、以下の部分については回答の趣旨がよく理解できませんでしたね…。
<コメントの概要>
 結論の背景には文意が不明箇所ある。たとえば第12項で「企業固有の見積りをどのように反映すべきか」とあるが、これは「企業固有の信用力をどのように反映すべきか」ということではないかと思われる。また、それが「現時点における負債の金額は将来の見積り支払総額を超えることはないとの意見」と同値の命題であるかのように表現されているのは適切ではないと思われる。

<コメントへの対応> 
本公開草案第10項(本実務対応報告第11項)は、マイナス金利の状況下において、信用リスクフリーレートをどのように考えるべきかが論点となるものである。
他方、本公開草案第12項(本実務対応報告第13項)は、マイナス金利の状況下において退職給付債務を算定するにあたって、その算定額に企業固有の見積りを反映させる必要があるか否かが論点となるものである。
多分、このコメントを寄せた人も同じ感想ではないでしょうか。


冒頭に書いたように、今回は適用期間が1年限定という暫定対応であり、結論の背景やコメント対応には本当の意味での最終結論を得るために引き続き検討を行うこととしており、同じ日にASBJから公表された「現在開発中の会計基準に関する今後の計画」においても、「今後、速やかに検討を開始する予定である」とされています。

今回の実務対応報告に関しては、時間的余裕がなかったこともあり、退職給付専門委員会での議論はほとんど行われず、ほぼ企業会計基準委員会(親委員会)のみで審議が進められました。

事前の公開草案に対しては、いわば身内である専門委員会の委員から、「本公開草案のような内容的に中途半端な(品質面で問題のある)ものを公表する必要性はないと考える。」という手厳しい意見も寄せられており、今後に関しては、まず専門委員会での議論をスタートさせることになるのではないかと思います。