3月3日、国の年金資産を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)から2016年度の第3四半期(2016年10~12月の3か月)の運用成績が公表されました(こちら)。

結果は、各種ニュースでも報じられているとおり、トランプ相場の追い風を受けて四半期としては過去最高の10兆4973億円を稼ぎ出しています。

運用利回りにすると7.98%、単純に年率換算すれば35.9%とすごい率になりますが、昨年度5兆円の損失を出した時と比べると(金額は大きいのに)ニュースの扱いは控えめですね。

もっともこれは3か月という短期的な値動きによるものであり、例外的な成績です。実際、今年度に入って第1四半期(2016年4月~6月の3か月)の運用成績は5兆2342億円のマイナスであり、第2四半期も含めた2016年度のこれまでの通算成績(2016年4月~12月の9か月)は、7兆6378億円のプラス、収益率にすると5.66%となっています。

ところで、GPIFによる四半期ごとの運用成績の公表は期が終わってからおよそ2か月後、年度末(毎年3月末)に関しては3か月以上かかっています(7月に公表)。ただそこまで待たなくても、おおよその結果を見積もることはできます。

実際、2月9日に書いた記事「年金世代1人あたりで見る年金制度の黒字」の中で、2016年4月~12月の運用収益は6~7兆円程度のプラスと推測していました。最終的にはそれより少し多かったわけですが、大きくは外れていません。

この推計値のもととなっているのは、
  1. 2016年9月末時点の資産の構成割合(前回の公表値)
  2. 資産種類ごとの市場の収益率
  3. 2016年9月末時点の資産残高(前回の公表値)
の3つです。

1つ目の「運用資産の構成割合」は、昨年11月25日に公表された報告書に以下のとおり記載されています。
  • 国内債券:36.15%
  • 国内株式:21.59%
  • 外国債券:12.51%
  • 外国株式:21.00%
  • 短期資産:8.75%
そして2つ目の資産種類ごとの市場の収益率は、企業年金連合会のこちらのページから確認することができます。だいたい翌月の上旬には前月の実績が掲載されます(これを書いている時点では2月分はまだのようですが)。

2016年10月~12月の市場の収益率は以下のとおりとなっています。
  • 国内債券:△1.47%
  • 国内株式:14.95%
  • 外国債券:7.55%
  • 外国株式:17.69%
短期資産(有担保コール翌日物)については2016年5月以降未公表ということで0%として、上の資産構成割合と掛け合わせると(ExcelのSUMPRODUCT関数を使用)、7.36%という収益率が出てきます。これは、GPIFの資産構成割合が一定で、かつ各資産の運用成績が市場の平均と全く同じだったと仮定した場合の収益率です。

実際には資産構成割合は常に変動し、運用成績も市場の平均通りにはならないわけですが、GPIFのように巨額の資産を運用している年金基金では、短期間で資産構成割合を大きく変えたり、市場の動きと大きく異なる運用を行うことは困難です。したがって、上記のような仮定を置いても、それほど大きく外れることはありません。

そして、3つ目の2016年9月末時点の資産残高は132兆751億円であり、これに7.36%を掛けた9.7兆円が、第3四半期の運用収益の概算額ということになります。実際の収益率(7.98%)との誤差は0.62%、金額にして0.8兆円程度です。

市場の収益率というのはもちろんコントロールできませんから、あとは資産構成割合をどうするかで運用成績はほとんど決まってしまうということですね。