高年齢者雇用アドバイザーの実態

厚生労働省が所管する独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が行っている事業の1つに、高年齢者雇用アドバイザーによる事業主への相談・助言というのがあります。その内容について、WEBサイトのQ&Aの中では次のように紹介されています。
【問】高年齢者雇用アドバイザーは何をしているのですか?

【答】定年の引き上げや廃止、継続雇用制度の導入又は改善などの高齢者雇用管理改善に取り組む企業を訪問し、企業診断システムの活用などにより、取り組みを阻害する要因や課題を把握・整理し、企業の実情に即した助言を無料で行います。
また、企業が抱える課題について具体的な改善策を作成、提案する企画立案サービス等の有料支援も行っています。

しかし、実際に高年齢者雇用アドバイザーとした活動していた方の著書によると、「高齢者雇用管理改善に取り組む企業」に出会うことは稀なようです。



本書では、300社以上への訪問やインタビューから見えてきた、定年以降の高齢者雇用の実態が描かれており、国の推し進めようとしている高齢者の活用について、現場との温度差が浮き彫りになっています。

高齢者雇用の歓迎度を表す凹カーブ

一言で言ってしまうと、経営者にも、人事担当者にも、高齢者を受け入れる職場でも、定年再雇用者は歓迎されていないことがほとんどであったということなのですが、一部には歓迎されているケースもあり、その分岐点として紹介されていたのが下記の図です(本書に掲載の図表を簡略化して作成)。

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「中途半端職能」者にあたるのがいわゆる「ホワイトカラー」の人材であり、そのままでは会社で歓迎され、活躍の場を与えられることは難しく、「強い意志と非凡な努力で上辺の右側の”高度職能・高賃金グループ”への仲間入りを果たすか、煩悶し自らを説得させる葛藤を経て、敢えて上辺の左側の”低職能・低賃金グループ”に行く逆転進するか」を迫られると著者は指摘しています。

私も、「ウチはみんな70超えても頑張って働いてるよ」という会社の人事担当者に話を聞く機会があったのですが、仕事内容を聞くと、店舗での商品の荷卸し作業や(凹の左側)、自動車整備士の仕事(凹の右側)ということで、確かに当てはまっているといえそうです。

共通しているのは、若手のなり手が少ない職種であること。ただ、定年を超えてからこれらの転進を図るのは、能力的、体力的、心理的なハードルは高いでしょう。

「拡雇用」のための定年前倒し

本書の最終章では、「再雇用以外の定年後の働き方とは?」と題して、再雇用以外の広義の雇用対策、「拡雇用」に向けたいくつかの提言がなされています。その最後にあったのが「定年の前倒し」。

国としては、現在法律で「60歳を下回ってはならない」とされている定年を引き上げる方向で考えているようですが、著者は、逆に定年を引き下げたり、各企業で労使間で定年を設定できるようにすることを提言しています(ちなみに、アメリカなど定年そのものがない国もある)。

60歳を迎えてから転進を図るのは難しくても、例えば定年を40歳として、その後も同じ会社で報酬に見合ったパフォーマンスを発揮できる限り働くのか、社内で転進を図るのか、あるいは社外に出て転職や独立の道を選ぶのか、より早い段階で自分のキャリアについて考え、準備することで、より柔軟に対応できるようになることが期待できます。

組合側、従業員側の抵抗は非常に大きいでしょうが、今の状況のまま、65歳、70歳と定年を延ばしていくのは無理があるでしょう。あるいは、定年は60歳のままとしつつも、40歳や50歳といった節目の年齢で、転進を図るような機会を設けるようにすることも考えられます。

その場合、退職金は40歳到達時には退職事由にかかわらず満額支給となり(あるいは最初から確定拠出年金を導入)、社外に出ることを選んだ人に対しては、支援金として退職金を上乗せするような設計になるでしょう。