最近は特にDC(確定拠出年金)について書いていることの多いのこのブログですが、たまにはタイトルのとおり退職金の設計について書いておこうと思います。

個々の企業の退職金(退職給付制度)の設計を考えるとき、その給付の内容を特徴づけるのは、基本的に、
  1. 給付の水準(いくら支給するのか)
  2. 給付の格差(何で差をつけるのか)
の2つの要素です。

退職給付制度の分類には、例えば、確定給付型か確定拠出型かというのがありますが、各社員が選択した運用の方法によって給付額に差がつくのが確定拠出型、そもそも社員ごとに運用方法を選択できない(したがって運用で差がつくことはない)のが確定給付型、ということができます。

2の給付の格差に関して、制度設計の場面で時間をかけて検討することの多いテーマは、退職金(DCであればその掛金)の算定方式をどうするのか、ということです。代表的な退職金の算定方式には、
  • 最終給与比例制:退職金=退職時の給与×勤続年数に応じた係数
  • ポイント制:退職金=各年のポイントの累積×単価
  • 定額制:退職時の勤続年数や資格等に応じて定められた金額
などがあり、ポイント制の場合には、さらに何を基準として各年のポイントを定めるのかを検討していくこととなります。

こうした退職金の算定方式によって、同期入社で同時に定年退職を迎えた場合でも、昇格スピードなどによって支給額に大きな差がついたりつかなかったりすることになります(当社Pmasサイトに掲載のこちらの記事も参照ください)。

一方、同じように昇格してきた場合であっても、退職金に差がつく要素として、退職事由に応じた係数(支給率)の違いがあります。定年退職の場合に比べて、定年前に自己都合で退職した場合には、退職金を減額する取り扱いが多く見られます。

以下の図は、入社から定年までの退職金の推移について、典型的な3パターンのイメージを示したものです。
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どれも定年(60歳)で退職した時の支給額は100で同じですが、その前に自己都合で退職した場合の金額には大きな違いがあります。

まず、青で示したのが「①定年ご褒美型」。図では、定年退職の場合は退職金が満額支払われますが、定年前に退職した場合には、金額は半分に減らされます(実際には勤続2~3年未満で退職した場合は退職金は出ない場合が多い)。

ただ、図のように定年直前での退職でも半分しか支給しないというのは、あまり合理性はないように思います(もともとは、社員を定年までとどめおくことで、競合他社への転職を防ぐ、というような意味合いもあったのかもしれませんが)。

次に、オレンジで示したのは「②フラット型」。退職事由にかかわらず、退職金を満額支給するという設計です。確定拠出型の場合は退職事由によって支給額に差をつけることができないため、自動的にこのフラット型になります。

実際の退職金制度の設計においては、上記の①と②の間、つまり、勤続期間や年齢の若い間は自己都合退職時の金額を抑えるものの、徐々にその差を縮小し、一定の勤続年数や年齢以後はフラット型になっているケースが多くなっています。

最後に、グレーで示したのは「③早期退職促進型」。定年前(主に40代後半以降)に退職する社員に対して、退職金を割り増しする設計です。リストラなどによる一時的な割り増しではなく、恒常的に設けているものです(但し事前に会社側の承認を必要とすることもある)。

退職金を割り増ししてでも退職を促してその後の賃金の支払いを抑えるとともに、より若い人のためにポストを確保したいというような場合に採用されるパターンです。

このような、退職事由や退職時期に応じた支給額の調整については、より複雑な退職金の算定方式についての議論に比べて、制度設計の過程で割かれる時間は少ないのが実情です。

しかし、もらう側にとっては、理解が難しい退職金の算定方式よりも、「いつ辞めるのが有利なのか」のほうが、より大きな関心事になるかもしれませんね。
(なお、上記①~③の3つのパターンの名称は、今回私が勝手につけたものです。)