年金制度に対する一般の理解が進まない理由の1つに、金額が大きすぎて全体像をイメージしづらいというのがあると思います。昨年度、国の年金資金を運用するGPIFが5兆円の運用損失を出してニュース等でもよく取り上げられましたが、5兆円と言われてもなかなか実感がわきません。

ちなみに、2016年度に入ってからの運用状況は、今のところ9月までの第2四半期分までしか公表されていませんが、12月までの第3四半期分までのところでは、6~7兆円程度の運用収益(プラス)になっていると推測しています。

この兆円単位の金額を、1人あたりに直すともう少しイメージもわくんじゃないか?ということで、前年度(2015年度)の厚生年金・国民年金の収支決算(厚生労働省のこちらのページに掲載)を、年金世代1人あたりの金額に換算してみました。以下、厚生年金と国民年金の合算の金額です(年金世代の人数を4000万人として計算)。
<歳入合計>49.4兆円→124万円
 (うち、一般会計より受け入れ:11.0兆円→28万円)
<歳出合計>47.0兆円→118万円
<黒字額>2.4兆円→6万円

歳入のうち、一般会計より受け入れというのは、税金(財源は主に消費税)で賄われている分であり、他は基本的に現役世代の保険料収入によるものです。一方歳出のほうは、基本的に年金世代への年金支給に充てられている金額です。

現役世代の人数は約6700万人なので、年金世代1人分の年金に対して、現役世代1.7人分の保険料を徴収していることになります。

以上の内容を図に示すとこんな感じになります。
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年金支給のほうは1人年に118万円なので、夫婦二人だとだいたい月に20万円くらいの計算になります。

一方、保険料のほうは1.7人で年に96万円というとかなり金額が大きいように感じますが、厚生年金保険料の半分は会社負担であり、また通常の保険料以外の収入も含めた金額となっているので、実際に本人の収入から納めている保険料はこの半分以下です。

そして、この96万円のうち、90万円は年金支給に充てられていますが、余った6万円の黒字は将来に備えて積み立てられています。

積立金自体の運用収益は、昨年度は13万円のマイナスでしたが、過去15年間の平均で見ると8万円のプラスです。今後、保険料・消費税と年金支給の収支が逆転してマイナスになっても、数万円程度なら運用収益でカバーできるとみてよいでしょう。

そしてこの積立金がいくらになっているかというと、2015年度末で357万円です(実際の総額は143兆円)。ちょっとやそっとで底をつくような金額ではありません。仮に底をついたとしても、毎年入ってくる保険料と消費税の分は年金を支給することができます。

今の保険料や年金の水準を変えなくても、おそらく今後数十年は問題なく支給を続けることができるでしょう。しかしさらにその先を見据えて年金額を少しずつ調整し、資金が枯渇しないようにしていくというのが、日本の年金制度の基本的な仕組みです。