昨日の記事では、退職給付会計におけるマイナス金利への対応について、10日に開かれた企業会計基準委員会での議論の状況を紹介しましたが、同じ日に、有償ストックオプションの会計処理についての議論も行われました。

有償ストックオプションとは

通常のストックオプションでは、それを社員(または役員)に付与した時点では、社員に資金負担は発生せず(無償)、その後権利行使が可能となり、実際に権利行使(ストックオプションに定められた価格で株式を取得)した時点で初めて資金負担が発生します。

仮に、付与時に定められた権利行使価格が1株100円、権利行使時の株価が150円だったとすると、権利行使により取得した株を市場で売却することで、差額の50円を利益として得られます。仮に株価が100円未満に下がった場合は、権利行使が可能であったとしても行使する義務はないため、損失を被ることはありません。

付与時点では、将来利益を得られるのか、その額がいくらになるのかはわかりませんが、ストックオプションが金銭的なプラスの価値を持つことは明らかであることから、会計基準上は、この価値を一定の評価モデルで算定したうえで、社員に対する報酬として費用計上することを求めています。

一方で、有償ストックオプションでは、付与時点で社員からの資金の払い込みを受けます(社員がストックオプションを「購入」するようなイメージ)。

ただ、将来利益が出るかどうかもわからないものに高い価格を付けてしまうと社員は買いたいと思わないので、会社業績(例えば営業利益)が一定の水準を超えた場合にしか権利できないようにするなどして、価格を抑えるのが一般的です(権利行使できる可能性が低くなるのでストックオプションとしての金銭的価値は下がる)。

有償ストックオプションの会計処理

通常の(無償の)ストックオプションに関しては会計基準が定められており、上記のように報酬として費用計上することが求められていますが、有償ストックオプションについては基準が明確に定められておらず、実際の処理としては費用計上はしない取り扱いが一般的のようです(社員への報酬ではなく、社員からの投資として扱うイメージ)。

ただ、企業会計基準委員会では、有償ストックオプションについても通常のストックオプションに準じた形で費用計上する方向で議論が進められています(但し、現時点では、新しい基準が公表される前に付与された有償ストックオプションについては、従前の処理を認める案となっている)。

この場合、ストックオプションの評価額の算定にあたっては、付与時に払い込まれる金額を差し引く案となっていますが、ストックオプションの会計基準では評価額の算定に権利行使のための業績条件は反映しないこととなっていることから、業績条件を考慮して算定した払込金額を大きく上回る可能性があります。

また、最終的な費用計上額は、実際に権利行使できる状態になったかどうかに左右されることとなります。例えば、業績条件をクリアして付与したすべてのストックオプションが権利行使されることとなれば、その評価額全額を費用計上することとなる一方、業績条件の未達によりすべてのストックオプションが権利行使できなくなった場合は費用計上はされないこととなります(それ以前に一定の見積りにより費用計上していた場合は、戻し入れの利益が発生)。

つまり、付与したあとの会社業績によって、最終的な費用計上額が変わりうるということです。

有償ストックオプションを発行する上場企業は数年前から増えてきていますが、新しい会計基準ができて費用計上が必要となったり、またその額が将来の会社業績によって変動する可能性が出てくると、今後発行する企業は少なくなるかもしれません。