今週10日に企業会計基準委員会が開かれ、引き続き退職給付債務計算におけるマイナス金利への対応について議論が行われました。Webcastを見た限りでは、主な論点と方向性は以下のとおりとなっています。

公表文書の位置づけとスケジュール
2016年3月期決算については「議事概要」という形で取り扱いが示されたわけですが、これはあくまで緊急対応であり、今回は「実務対応報告」という形で公開草案の公表とコメント募集という本来のプロセスを踏んで基準化される見通しです。

ただ2017年3月期決算まで間がないため、次回26日に公開草案の公表議決を行い、コメント募集期間は通常(2か月)よりも短く設定したうえで、3月中には最終基準を公表する方向性となっています。

マイナス金利の取り扱い
割引率を決定する際に参照する債券の利回りがマイナスとなった場合、割引率をそのままマイナスとするのか、ゼロとするのかという論点であり、本来この議論のメインテーマとなるべき項目です。

ただ(委員会の中でも外でも)意見が分かれており、収束する見通しがたっていないことから、事務局からの提案は一貫して「どちらも選択できるようにする」(2016年3月期の取り扱いと同じ)であり、現状ではやむなしという方向性です。

会計方針の変更か見積りの変更か
マイナスとゼロのどちらも採用できるとした場合、その取り扱いを変更したときにそれは「会計方針の変更」なのか「見積りの変更」なのかという論点が出てきます。

「見積りの変更」であれば、その影響額については通常の割引率の見直しと同様に数理計算上の差異に含める処理で許容されるかもしれませんが、「会計方針の変更」となると遡及修正等、実務的には非常に面倒な話になってきます。

しかし、この点についても現時点では決めきれないということで、基準上は取り扱いは明記されない方向性です。ということで、最終的には個々の状況に応じて会計士・監査法人の判断次第ということになりそうですが、そこまでして取り扱いを変更したいというニーズは実際にはほとんどないのではないかと思います。

開示
前回の委員会で示された案には影響額の開示についての記載がありましたが、今回の案からはそれも削除されています。財務諸表の作成者側としては負担の増加が避けられた形ですが、一方で他社の有価証券報告書から「マイナス」と「ゼロ止め」のどちらを選んだのか、もう一方を選択した場合との違いはいくらなのかを読み取るのは難しくなりそうです。

基準の有効期限
事務局からの提案では、今回の実務対応報告は「当面の取り扱い」とし、金利水準や国際的な動向を見ながら改めて検討することを意図したものとなっていますが、これについては「どのような状況になったら見直しの議論を行うのか不明確」「当面と言いつつ実際には恒久的な取り扱いになってしまうのでは」といった反対や懸念を示す意見が出されました。

これに対して、事務局からは今回の実務対応報告の有効期限を2017年3月期からの1年間とすることも考えられるがどうかという追加提案があり、そうした方向で修正されることになりそうです。

ただ1年たてば結論が出るという保証はなく、現在のような金利状況が続けば、来年も同じような議論が繰り返される可能性は高いなという気がしますね。