先日、ある企業から、運営管理機関から提示された確定拠出年金(DC)の運用商品のラインナップについて相談を受けたのですが、そこで感じたのが「バランス型投資信託の国内資産の割合が高いな」ということ。

ほかの商品はどうなんだろうと思い、モーニングスターのファンド検索から、DCで採用されている主要なパッシブ運用のライフサイクルファンド(注)について、国内と海外の比率を見てみたところ、以下のような結果になりました。

注:同じ商品グループの中で、株式と債券の構成割合が異なる3パターン程度の商品を用意して、リスク・リターンの水準を選べるようにしたもの。

■株式
1

■債券(現金等については国内債券に含めて表示)
2

債券については、株式とのリスクの分散や、安定性重視という観点で考えると、為替の影響を受けない国内資産の比率を高くしておくことには一定の合理性があると思いますが、株式に関しては、今後の人口推移や経済発展の余地を考えると、国内資産の比率を高くする理由は見出せません。感覚的にはせいぜい株式全体の半分までというところです。

(ちなみに、日本に限らず投資先が自国資産偏重となる傾向を「ホームカントリーバイアス」と呼びます。)

なぜこのような傾向となっているのか?それには、これらのファンドがいずれも10年以上前から運用されていることが関係していそうです。

以下は、GPIF(国の年金)と確定給付型の企業年金の資産構成について、国内株式と海外株式の比率が10年前と比べてどう変わったかを示したものです。

■GPIF
3

■企業年金(企業年金連合会の調査より)
4

直近では、GPIFは国内と海外でほぼ半々、企業年金では海外のほうが比率が高くなっており、「ホームカントリーバイアス」は解消に向かいつつありますが、10年前は両方とも国内の比率のほうが高くなっていました。

そしてこの10年前の比率が、上で紹介した主要なバランス型投資信託の国内・海外比率と概ね一致していることがわかります。つまり、10年前はこれくらいの比率が「一般的」であり、それに合わせて運用商品が設計されたものと考えられます。

比較的新しい商品に関しては、海外の比率のほうが高かったり、先進国だけでなく、より高い成長が期待できる(その代わりリスクも大きい)新興国の株式を組み入れたバランス型投資信託もありますが、オーソドックスなライフサイクルファンドに関しては、構成比率を見直した商品は見当たりませんでした(検索に引っかかってこなかっただけかもしれませんが)。

このあたり、各運営管理機関や運用会社は、運用商品の選定や設計にあたって改善の余地があると思いますし、各企業においても確認しておきたいポイントです。