一昨日、「高齢者の定義を75歳以上に」という提言が、Yahoo!やNHKなどのニュースで結構大きく取り上げられていました。

前にも同じような話がありましたね。→「高齢者」が何歳からを決めるのは誰か

リンク先の記事にも書いたとおり、「高齢者」が何歳からなのかは国が一律に決めるのではなく、いつリタイアし、いつ年金をもらい始めるのかも含めて、一人ひとりが決めていくような制度にしていくべきではというのが私の意見です。

もしそのようにした場合、個人の意思を尊重するという観点からは、税制は、収入の中身(働いて得た収入なのか、年金収入なのか)に対して中立であることが求められますが、現状はどうなっているのか、ちょっと比べてみました。

給与には給与所得控除、年金には公的年金控除が適用され、それぞれ控除したあとの金額が課税の対象となります。以下は、控除前の額を横軸、控除した後の額を縦軸にとってグラフにしたものです。
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年収の高いところはほとんど重なっているので、300万円までのところを拡大します。
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一番差が開いているところでは、給与所得のほうが55万円も大きくなっています。その分、取られる税金も(そして社会保険料も)多くなります。税制上は、働いて得た収入よりも、年金収入の方を優遇してるということです。

これは、少子高齢化への対応として「一億総活躍社会」を掲げる政府の方針とは明らかに逆行するものです。また、年金と同程度の低賃金での仕事に就いている若い世代に、より重い負担を強いるものでもあります。

昨年12月に発表された与党の税制改正大綱では、今後の税制改正に当たっての基本的な考え方の中で、
社会経済の著しい構造変化の中で、近年、結婚や出産をする経済的余裕がない若者が増加しており、こうした若い世代や子育て世代に光を当てていくことが重要である。(中略)個人所得課税においては、所得再配分機能の回復を図ることが重要であり、各種所得控除等の総合的な見直しを丁寧に検討してく必要がある。
としています。

また、検討事項の第1項目には、
年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意して、年金制度改革の方向性を踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。
とあり、現在の税制に対する問題は、与党内でも認識されていることが読み取れます。

あとはこれを実行に移せるかどうかであり、最終的にはどう世論の支持を獲得していくのかが重要になるのでしょう。