昨日書いたとおり、リスク分担型企業年金という新たなハイブリッドプラン(確定給付と確定拠出の両方の性質を併せ持つ企業年金制度)の導入が正式に決まったわけですが、他にも「実績連動型CB」というハイブリッドプランが2014年度にすでに導入されていたりします。

実績連動型CBの詳細についてはこちらのPmas記事をご覧いただければと思いますが、概要は以下のとおりです。
  • 毎期の積立額(給与の一定率 or 退職金ポイント or 一定額、等)に利息を付けた額を退職時に支給
  • 利息は毎期の年金資産の運用利回りに連動させる(マイナスもありうる)
  • 但し最終的な支給額には元本保証を付ける(利息の累計がマイナスになった場合は補填)
実績連動型CBの「CB」とはキャッシュバランスプランの略ですが、一般的に普及しているCBでは利息を国債利回りに連動させていて、かつ利回りの下限を0またはプラスの率で設定しています。一方、実績連動型CBは年金資産の実際の運用利回りに連動して利息が計算されるのが特徴であり、単年度ではマイナス利回りもあり得ます。

但し各加入者に対して、加入期間を通算した利回りは0以上とする必要があることや(元本保証)、掛金計算は通常の確定給付企業年金と同様に定期的に実施する必要があることから、会計上はあくまで「確定給付制度」として扱われます。この点が、今回導入されたリスク分担型企業年金との大きな違いです。

運用実績に応じて給付額は変動するが退職給付債務は残るという点が、企業側・従業員側双方にとってあまりメリットが感じられないせいか、実際にこのプランを導入している例はほとんど見かけません。ただ、解散した厚生年金基金の後継制度として用意された簡易型の確定給付企業年金に、これを採用しているケースがあります。

年金資産を全額一般勘定とすることで毎期プラスの利回りを確保し、マイナス利回りによる元本保証のための企業の追加負担が生じないような設計となっており、事実上「確定拠出」に近い形になっています。

ではもしこのプランをリスク分担型企業年金に移すとどうなるか?

リスク分担型企業年金では以下の合計額を「財政悪化リスク相当額」とし、この半分以上を追加の掛金(リスク対応掛金)でカバーすることを求めています。
  1. 価格変動リスク
  2. 予定利率低下リスク
しかし、1については全額一般勘定の運用であれば0と計算され、2についても特別方式を採用することで0とすることができると考えられます(実績連動型CBでは再評価率と予定利率は連動するため、予定利率の低下は積立不足の発生要因とはならない)。

つまり財政悪化リスク相当額は0であり、リスク対応掛金の設定が不要となる設計もありうるということです。

このケースでは、リスク分担型企業年金に移行しても給付や掛金の負担にはほぼ影響ないですが、会計上の取り扱いは、確定給付から確定拠出に変わることになりそうです。

ただ、もし一般勘定の運用先である生命保険会社が破たんするなどして一般勘定が元本割れしてしまった場合には、リスク分担型でなければマイナス分を会社が追加掛金により補填する必要がありますが、リスク分担型だと給付が減額されてしまうという違いは出ることになりますね。