近年、企業の退職金や年金の水準は低下していると言われています。その根拠の1つが厚生労働省が行っている就労条件総合調査。退職給付に関してはほぼ5年ごとに調査が行われており、定年退職者に対する支給額についても集計されています。

その結果がこちら。
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これは、勤続25年以上で定年退職した大卒社員の退職給付額の平均です。1997年調査を境に減少に転じ、直近の2013年調査ではピーク時より1000万円近くも減少しています。

しかし「退職給付」の総額が本当に1000万円も減っているかというと、そういうことでもなさそうです。

以下は、2013年の調査で使用された調査票です。
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小さくて見づらいですが、2012年の1年間に退職した社員を対象に、実際に支給した(もしくは支給額が確定した)退職一時金、年金現価額(年金で受け取る代わりに一時金での受け取りを選択した場合の一時金の額)及び年金月額を記入するようになっています。

…ということは、確定拠出年金(DC)から給付額はここには入っていないということになります。退職時にDCの残高がいくらだったのかは基本的に本人にしかわからないので、この調査票を記入する企業の担当者はその金額を書くことはできません。

DC制度が2001年に創設されて以降、企業型DCの実施企業数、加入者数とも増加し続けており、定年退職者の退職給付の総額に対するDCの割合も徐々に高くなってきていると考えられます。1000万円の減少がすべてDCでカバーされているとは思えませんが、この調査結果ほどには退職給付の総額は減少していないと見るべきでしょう。