人事や経理の担当の方にiDeCo(個人型DC)の話をすると、必ずあるのが「給与天引きは…」という反応。社員がiDeCoに加入するとき、掛金の支払方法は「個人口座からの引き落とし」か「給与天引き」のいずれかを選択することになりますが、企業の担当者としては、やはり事務が煩雑になる給与天引きはできるだけ避けたいところでしょう。

国民年金基金連合会が定める個人型年金規約77条2項には、「事業主は、第2号加入者が前項に定めるところにより、事業主払込の方法による掛金の納付を希望する場合には、正当な理由なくこれを拒否してはならない。」とあり、社員が天引きを希望する場合は基本的に対応しなければならない規定になっています。

ただ、iDeCoに加入する際の手続き書類上は、以下のとおり企業側が天引きを認めるかどうかを決める流れになっており、 「体制が整っていない」等の理由で個人払込(=個人口座からの引き落とし)を指定することができるようになってます。
申出者(=社員)の掛金納付方法
①申出者が希望しているため「事業主払込」とする
②申出者が希望しているため「個人払込」とする
③申出者は「事業主払込」を希望しているが「個人払込」とする
④申出者は「個人払込」を希望しているが「事業主払込」とする

↓(上記で③を選択した場合)「事業主払込」が困難な理由
①「事業主払込」を行う体制が整っていないため
②その他(               )

一方、社員側からみたときは、天引きで掛金を納めると「残高不足の心配がない」「年末調整の手間が省ける(天引きの場合は源泉徴収に反映)」といったメリットがありますが、掛金の額を変更したり停止したいときにはいちいち会社に対しても手続きをとらないといけないというデメリットもあります。

実際、天引きで対応すると担当者の事務負担が増えて困るということであれば、会社の事情に加えて「個人払込であれば掛金変更の際に会社への手続きは不要」という社員側のメリットもあわせて説明することで理解を得、基本的には天引きでの対応を行わないというのも1つの方法だと思います。

企業側に天引き対応を強制して「天引きの事務負担がイヤだから社員にはiDeCoのことをあまり知らせたくない」となってしまっては本末転倒でしょう。

<2016/12/29追記>
個人の立場から、iDeCo掛金を給与天引きにするデメリットについて改めてまとめた記事を、2016/12/30付で公開しています→こちら

<2018/8/29追記>
iDeCo掛金に会社が上乗せを行うiDeCo+(イデコプラス、中小事業主掛金納付制度)を実施する際には、本人掛金を給与天引きとする必要があります。iDeCo+の関連記事はこちら