選択制DCと個人型DCについて、1回目は老齢厚生年金、2回目は障害・遺族厚生年金の給付との関係から比較してみましたが、今回は休業補償との関係から比較してみます。

休業補償に関する給付で休業前の給与水準に連動するものとして、健康保険からは「傷病手当金」「出産手当金」、雇用保険からは「育児休業給付金」「介護休業給付金」があります。

健康保険からの給付は休業前1年間の「標準報酬日額」、雇用保険からの給付は休業前の「賃金日額」をもとに支給されますが、これらは以下のような基準で算定されます。
  • 標準報酬日額:毎年4~6月の給与をもとに9月から翌年8月の標準報酬月額が計算され、これを30で割ったのが標準報酬日額(2等級以上の給与の変動があった場合はその時点で改定)
  • 賃金日額:過去6か月間の給与(賞与除く)÷180
したがって、前回までと同様の前提条件のもとでは、選択制DCに加入して概ね半年~2年のうちには上記の金額はDC掛金の分だけ低くなります(個人型DCの場合やDC未加入の場合は影響なし)。

例えば傷病手当金の場合、ケガや病気で働けなくなって給与の支払いがなくなると、休業1日につき標準報酬日額の2/3が支給されるため、(選択制DCへの掛金拠出により)標準報酬月額が2万円下がったとすると、傷病手当金の支給は1ヶ月で約1.3万円、最長1年半の支給で約24万円減少することになります。

なお、業務上のケガや病気による休養の場合は傷病手当金ではなく、労災保険からの給付となり、休業前の給与日額(過去3か月の平均)の8割が支給されることとなります。

他の給付についても以下のとおりであり、選択制DCの場合には傷病手当金と同様に給付が減少することとなります。
  • 出産手当金:標準報酬日額の2/3(期間は出産予定日前42日から産後56日まで)
  • 育児休業給付金:賃金日額の67%(産後休業後、最初の180日間)及び50%(181日目~子が1歳になるまで)
  • 介護休業給付金:賃金日額の67%(最長3か月)
これらの給付を受ける際にはベースの収入が下がりますし、医療・介護等の費用もかかってきますので、給付額の減少によるデメリットがより大きく感じられるかもしれません。なお、これらの給付要件に該当しても、60歳になるか、所定の障害状態と認定されるまでは、DCの資産を引き出すことはできません。