前回に引き続き、選択制DCと個人型DCの違いについて考えていきます。前提条件と、老後資金の観点から考えた前回の結果は以下のとおりです。

<前提条件>
  • 対象者は40歳の会社員(男性)で妻は38歳。
  • 年収は600万円。
  • 所得税・住民税の税率等は2016年のままとする。
  • DCの掛金は月2万円とし、選択制DCについては標準報酬も2万円減少するものとする。
  • 社会保険料(厚生年金保険料・健康保険料・介護保険料・雇用保険料)の本人負担分は標準報酬の15%とする。
  • 個人型DCの口座管理手数料は年間5千円とする(他の手数料は無視)。
  • DCは一時金で受給し、全額非課税とする。
  • DCの運用損益や厚生年金の物価・賃金スライド等は考えない。
  • 厚生年金額の計算式は「本来水準」を用いる。
  • 公的年金収入に対する税・社会保険料負担は15%(つまり手取りは85%)とする。

ケース1:そのまま60歳になるまで掛金を積み立て、65歳から20年間老齢厚生年金を受給
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(注)①、③、④は20年間の累計額

4万円の差はちょっとした前提条件の違いによって変わるため、老後資金の観点からは、選択制DCと個人型DCに明らかな優劣はありません。

今回は、障害・遺族給付との関係の観点から考えてみることにします。

ケース2:50歳のときに障害を負って退職、10年間障害厚生年金(2級)を受給後に死亡し、その後妻が25年間遺族厚生年金を受給
20161108
(注)①、③、④は10年間の累計額

50歳以降はDCへの掛金の拠出はないものとし、また、障害厚生年金・遺族厚生年金は非課税であることから、簡便的に「手取り=額面」として計算しています。

このケースでは個人型DCのほうが若干有利になっています。障害年金や遺族年金の受給期間が長くなるほど、選択制DCは不利になります(それでも未加入よりは有利ですが)。

ただ妻の年収が一定水準以上なら、65歳以降は自分の老齢厚生年金を受給することとなるため、遺族厚生年金の受給期間は5年程度となり、選択制DCのほうが少しだけ有利な結果となります。やはりこのケースでもちょっとした前提条件の違いにより結果は変わるため、一概にどちらが有利とはいえません。

次回は健康保険からの給付について比較してみます。