当社の情報提供サイト「Pmas」にて、コンサルタントコラム「リスク分担型企業年金の導入に向けて」(全3回)を公開しました。

企業年金連合会の「月間 企業年金 2016年7-8月号」に寄稿した内容をもとに書いたもので、リスク分担型企業年金の特徴や制度の実施にあたっての論点について解説しています。以下、各回ごとの概要です。詳細はリンク先をご覧ください。

第1回:リスク分担型企業年金とは
従来のDBとの違いだけではなく、DCとの比較も交えてリスク分担型企業年金の特徴を解説しています。ひとことで言えば、「DBのメリットである給付設計の柔軟性を保ちつつ、DC同様に退職給付債務の認識が不要な『いいとこどり』の制度」です。しかし実施にあたっては色々と課題があり、その内容を第2回以降にまとめています。

第2回:リスク分担型企業年金制度導入にあたっての留意点
リスク分担企業年金における給付調整の仕組みや、制度の実施時に設定する事業主の追加拠出「リスク対応掛金」の設定方法、リスク分担企業年金へ移行する際の会計処理について、例示を交えて解説しています。

また、リスク分担企業年金の制度運営において重要なポイントとなる加入者の参画についても解説しています。

第3回:想定されるリスク分担型企業年金の実施形態
第2回までの内容を踏まえて、想定されるリスク分担型企業年金の実施形態を3つあげています。
  1. 従来の確定給付型の給付設計を維持したまま移行
  2. DCの代替として実施
  3. 退職金制度の内枠として実施
1がもともと想定されていたものと考えられますが、給付調整の仕組みが複雑なところが難点であり(従業員に理解してもらうのはほぼ不可能?)、これを回避する方法としてあげたのが2と3です。

2は限りなくDCの給付に近づけることで資産運用以外の変動要因をなくすという考え方であり、「給付設計の柔軟性」というメリットは一部損なわれますが、DCと異なり「60歳前でも退職時に受け取れる」「掛金額に上限なし」というメリットは確保できます。

3は退職金の総額を維持する(リスク分担型企業年金の給付の増減を退職一時金で相殺する)ことで、従業員側のリスクを吸収する方法です。ただその後のASBJ(企業会計基準委員会)での議論を見る限りでは、このケースでは会計上DB扱いとなり、退職給付債務の認識が必要となりそうです。

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今回公開したコラムは今年6月に書いた原稿の内容からほとんど変わっていません。当時案として出ていた政省令の改正と退職給付会計の実務対応報告もまだ確定しておらず(今月中には出そうな雰囲気ですが)、企業側でもそれほど目立った動きは今のところ見られない状況です。

今後、国債利回り連動型のキャッシュバランスプランのように新たな仕組みとして普及していくのか、運用実績連動型のキャッシュバランスプラン(BR)のようにほとんど日の目をみない仕組みになるのか(一部の簡易型DBでは採用されているようですが)、最終的には「退職金としての給付設計は残したいが退職給付債務は削減する必要がある」という強いニーズを持つ企業がどれくらいあるのか、ということになるでしょうね。