今日ご紹介するのはこの記事。

筆者の後田亨(うしろだ とおる)さんはこの業界では(多分)有名な人です。そしてほとんどの保険会社から目の敵にされているのではないかと思います。なぜなら「生命保険の基本は『入らないこと』である」なんて記事を書いている人なので。

10年間、保険会社の営業職員として働いていた経験を持ち、その後乗り合いの保険代理店に移籍し、現在は「保険販売につながらない情報を積極的に提供する」生命保険の有料相談や、講演・執筆活動を行っているということです。

上記の紹介記事では、次の4つのコピーに対して注意を呼びかける内容となっています。
  1. 他人事ではないリスクに備えましょう
  2. まさか自分が大病にかかるとは思ってもみませんでした
  3. 「一生涯」の保証が安心
  4. 「掛け捨て」ではありません
保険の最も大きな役割は、「起こる頻度は少ないけれども、もし起こった場合には大きな経済的損失が発生することがらに対して、その損失よりも小さな負担で備えること」にあります。

記事の中でも保険での備えがふさわしいのは『発生する可能性が低く、身近に感じることが難しいリスク』」と書かれています。

しかしそうした保険には入ろうとは思わないのが人間心理です。従って保険会社としては、できるだけリスクを身近に感じられるような商品設計とコピーを考えます。しかしそうなると今度は必ずしも保険で備えなくてもいいような商品が出てくることになります。

保険の特性からして、保険会社はこのジレンマを抱える宿命にあります。

また、この記事では4つのコピーに共通するのは「感情」に訴える点であると指摘しています(そうすることで、損得「勘定」の冷静な判断に目を向けさせない)。しかしこの「感情」と「お金」の関係は、とても厄介なものです。

例えば、私の妻は家電製品に延長保証をつけたがります。つけないと壊れた時に後悔するからです。実際、延長保証を付けていたことで無償で修理できたものもあります(掃除機の「ルンバ」)。

しかし延長保証が有料サービスとして成り立っているということは、全体でみれば修理費のほうが安くつくということです。でも延長保証に入らずにいて、ある家電商品が故障して修理費(もしくは買い替え)が必要になったとき、それが他の全ての家電製品を含めた延長保証の料金の合計より安かったとしても、やはり入っておけばよかったと考えてしまいますよね(そもそもそんな計算など普通はしない)。

これが生命保険だと、保険金や給付金が支払われるケースというのはさらに心理的ダメージが大きいことが起こったときなので、入ってなかったときの後悔の念も大きなものになります(もともと保険というものが存在しなければそんなこともないのでしょうが)。

保険に対して感情に左右されず、合理的に考えられるようになるためには、「お金」に心を惑わされない「しなやかさ」のようなものも身につける必要があるのでしょう。